「よかれと思って」の善意がつらい不妊治療

なるみ
出産直後のなるみさん

── 妊活中につらかったことはありましたか?

 

なるみさん:卵が育たないとか採卵できないときはつらかったですね。「なんで自分だけうまくいかないの?」と思ったり、赤ちゃん連れの方を見るとうらやましく思ったり。治療にはお金がかかるし、排卵を誘発する注射は痛いですから、もう本当につらい。注射を刺しすぎて腕が固くなってしまって、最後はお尻に刺してました。とにかく、終わりがないから気分も不安定になるんですよ。

 

そんなとき、私の治療を知っている身近な人にアドバイスを多くいただいたんですけど、逆にそれがつらく感じることも。聞き手のメンタルが弱っていると、ささいなことにも過剰に反応してしまうんですよ。たとえば妊活を経験している人はよかれと思って自分の経験談を話しがちだけど、結局は千差万別なので、それが当てはまらないんですよね。卵が育たなかったとか、治療がうまくいかないとか、みんなそれぞれの事情もあるし、体調もありますから。デリケートなことですし、お友達に言えないこともあります。本当によかれと思って言ったことでも、結果が見えていない人にとってはプレッシャーになったりすることも。私は妊娠とはまったく関係ない、気がまぎれる話をしてくれた方がうれしかったかな。

 

ある人は、友達が妊活を応援してくれて、お守りを持ってきてくれたことがつらかったと教えてくれたことがありました。人の善意やよかれと思うやさしさでも、つらく感じてしまう。通常のメンタルじゃないわけですよね。また、ある病院の先生の話で毎回お姑さんが同伴で来院するかたもいらっしゃると聞き、心配からのやさしさがストレスになることもあると。

 

妊活を経験して印象的だったのは、産婦人科って待合室にいる方がみんなニコニコしてるんですよ。「今、何か月ですか?」ってお互い話すこともあります。でも、不妊治療の待合室はみんな下を向いていてお互いに話しかけない。雰囲気がまったく違いますからメンタルが弱りますよね。「最近あの人、病院で見ないな?」というのは、妊娠したか、あきらめたかですから…。そんなことを考えて、またネガティブな気分になったり。本当に治療がつらいときは休んでもいいと思いますし、産科の妊婦さんたちと待つのがつらいなら病院を変えてもいいと思いました。

 

治療中、夫は普通に過ごしてくれていました。イライラしていても、こっちが当たっているように感じさせないようにしてくれたり。あとから聞いたら「3年治療して、お互い高齢だし、正直子どもはできないと思っていた」と。でも私が納得するとこまでやろうと思っていたそうです。そして、私も「もう次でダメならやめよう」と思っていたときに妊娠できました。不思議ですよね。