味わったことのない快感を知りたい
── それくらいうれしかったんですね。
川瀬名人:お客さんにもウケて尊敬する先輩にも勝って、舌とあごが動かなくなるくらいうれしかった。じゃあ、自分で目標と決めたM-1で優勝したら自分はどうなってしまうんだろうという気持ちなんです。きっと、味わったことのない快感が待っているんじゃないかと思います。その快感は当然、お金では買えないですしね。目標が困難なほど、費やした時間が大きいほど、快感も大きいじゃないですか。そう思ったら、やっぱりお金よりも快感なんですよね。優勝したその後よりも、その瞬間を味わいたいというか。人生の中で、みんなが味わえないような快感をどう味わうかっていうのが、自分の中ではすごく優先順位が高いんだと思います。
── たしかに誰も味わえない快感ですよね。
川瀬名人:そう思います。だからこそ目標をたてて日々活動をしています。目標とかゴールを設定すれば、「今、自分は何をすればいいかわからない」っていう最初の状態もクリアできると思います。1個1個の行動にも意味が出てくるというか。たとえばトークライブがあったときに、じゃあこのトークライブは何のためにやるのかと考えると、目標があるからおのずと「今回のライブでなにをすべきか」が見えてくるんですよね。僕はまだ目標を達成していないんで、何か言える立場ではないんですけど、毎日の行動が目標につながっていると思うと、やっぱりやりがいは出てくると思います。
── 家がない状態から、M-1で優勝するのは夢がありますね。
川瀬名人:当時は大変でしたけど、ホームレスになった経験も自分の中では大きな糧になっていますね。揺るがない自信というか、あのときがんばれたんだから大丈夫という気持ちです。だからこそM-1で優勝して、もっともっと快感を味わっていきたいと思います。
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夢を人生のなかでひとつのプロジェクトと設定し、目標を設定。そのプロジェクト期間の行動はすべて目標につなげて考えていくという川瀬名人。今後の活動からも目が離せません。
取材・文/大夏えい 写真提供/川瀬名人