主婦からメイド「還暦すぎて見つけた居場所」

── メイドさんとして働きたいという声も多いそうですね。65歳から応募できるとのことですが、65歳未満、50代後半や60代前半の方が応募してくるケースがあるとか。
デコちゃん:興味を持ってくださってうれしいです。65歳以上ということを説明すると「早く65歳になりたい!」っておっしゃってくださる方も。今は66歳から72歳まで7人のスタッフがいますが、桐生市だけではなく、東京や埼玉など他県から応募される方もいらっしゃって、不定期でオーディションをしています。
── おふたりはオープン当初からメイドとして働いているそうですね。何かきっかけがあったのでしょうか。
デコちゃん:私はもともと冥土喫茶を運営しているキッズバレイで働いていたんです。新しい取り組みをするとのことと、66歳という年齢もマッチしていたためか、メンバーに選ばれました。
ココちゃん:私はデコちゃんからの紹介でした。はじめは「冥土」とか不謹慎じゃない?って、ちょっと思ったんですけど(笑)。話を聞いているうちに、デコちゃんがラテン語の言葉で「メメント・モリ」という話を教えてくれたんです。メメント・モリは「死を想え」「死を忘れるな」という意味らしいんですよね。私も65歳になって、今まで死について考えたことがなかったんですけど、高齢者の居場所作りとか福祉など、「冥土喫茶」は自分と向き合うきっかけにもなるなと思ってやってみようかなと。あとは単純に楽しそうだなと思いました。
── おふたりとも飲食店勤務の経験はいままであったのでしょうか?
デコちゃん:私はフランス料理店で7年くらい働いていたことがあって、接客はもともと大好きなんです。フランス料理のお店も充実していたのですが、お客さんと会話する機会は多くはなかったんですね。「冥土喫茶」ではいろいろなお客さんとコミュニケーションをとる場が多いですし、「冥土喫茶」ならではの雰囲気も暖かくてすごくいいですね。さきほど話が出た若い人、高齢者など多世代間での交流もありますし。
ココちゃん:私は高校生のときに飲食店でちょっとバイトした程度で、結婚して娘を産んで、以前は会社員として働いたこともありますが、50代の10年間は専業主婦をしながら父の介護をしていました。65歳でメイドになりましたが、こんな人生があるとは思ってもみなかったですね。
60歳を過ぎて新しい世界に飛び込んで、人と人との繋がりの大切さをすごく感じています。毎月第一土曜日に勤務しますが、その日は朝から気持ちがシャキッとするんですよ。私とデコちゃんは魔法のアイテムと言っていますが、フリフリのエプロンとカチューシャをつけた瞬間、主婦からメイドになってテンションが上がるんです。私自身の居場所にもなっていると思います。