群馬県桐生市にある「冥土喫茶 しゃんぐりら」は、65歳以上の「メイド」姿のスタッフが働く店。「喪え喪えきゅん」とブラックジョークもこだまするお店ですが、実は地方の課題解決に繋がる一手になっています。スタッフとして働くココちゃん(66歳)デコちゃん(67歳)にお話を聞きました。
「喪え喪えきゅん」最初は照れましたよ(笑)

── 群馬県桐生市は1975年をピークに人口減少が進み、市街地の過疎化とともに高齢者が気軽に立ち寄れるファミリーレストランや喫茶店が激減。そこで、高齢者の居場所作りとしてNPO法人「キッズバレイ」が企画・運営をはじめたのが「冥土喫茶 しゃんぐりら」です。
65歳以上のメイド姿のスタッフさんが店員を務め、毎月第一土曜日の朝8時から12時まで営業。フリードリンクとお弁当を販売していますが、お弁当は桐生大学の栄養学科の先生がメニューを考え、当日の早朝から栄養学科の学生やボランティアの方が調理しているとのこと。店名は「メイド」ならぬ「冥土」カフェ。名前だけではなく、接客にも特徴があるそうですね。
デコちゃん:まず、店に入ると店の入り口に青いビニールの紐で川に見立てた「三途リバー」があります。来店されたお客様にご挨拶したあと、「三途の川を渡っていただく事になってしまいますけど、よろしいですか?」「川を渡るときに足を滑らせると地獄に落ちてしまいますので気をつけてくださいね」と、ちょっと意味深な感じを含みながら、店内にご案内します(笑)。
お水をお持ちするときは「お清めのお水でございます」。お弁当を出すときは、お弁当がおいしくなるおまじないとして「おいしくなーれ、喪え喪え、きゅん」と言いながら手でハートマークを。お客さまがお帰りになるときは「この世に疲れましたらまたぜひお越しくださいませ」と言ってお見送りしています。
── 入店からこだわり満載ですが、はじめから「喪え喪えきゅん」などの言葉はスラッと出ましたか?
ココちゃん:はじめは照れましたね(笑)。「喪え喪え」は「冥土喫茶」がオープンしてからお客さまに教えてもらったのですが、スタッフが、誰も本家の「メイド喫茶」に行ったことがなかったんです。それならと、みんなで一度、研修も兼ねて前橋の「コンセプトカフェ」に行ってみることに。そこで「萌え萌え」のやり方を教えてもらったり、接客の様子を見せてもらったりしながら自分達でも練習して。
その後「冥土喫茶」でもお客さんの前で「喪え喪え」を披露。最初は照れがありましたが、やっている自分達もすぐに楽しくなってきましたし、何よりお客さまの反応、お客さまが喜んでくださる姿を見て私たちもうれしくなりました。
── 一緒に気分が上がっていきそうです。お客さんは地元の高齢者の方が多いのでしょうか?
デコちゃん:カフェをはじめた当初は、予想に反して若い方が多かったのですが、地元の高齢者の方々も徐々に来てくださるようになりました。結果として、多世代の交流に繋がっていったのはよかったなと思います。メディアやSNS、口コミでもどんどん広がって、ほかのコンセプトカフェで働いているメイドさんが興味を持って見に来てくれたり、北海道や神戸、広島など、全国から来てくださる方もいたり。はじめた当初は、正直ここまで注目されるとは思いませんでした(笑)。
ココちゃん:お客さんの数は、初めは2時間の営業で10人から20人に届くかどうかでしたが、お客さんがたくさんくるようになって4時間営業にすると、3月が70人、4月が100人。今は10時くらいにはお弁当がなくなったり、いちばん最後にお越しになった方は30分くらい待っていただいたりすることがあります。毎月楽しみに来てくださる方もいますし、友達が友達を呼んだり、娘がおばあちゃん(=ココちゃんの母)を連れてきてくれたりと、たくさんの方が来てくださってありがたいなと思います。