『スッキリ』や『情報ライブ ミヤネ屋』でキャスターとして活躍した鈴木美穂さんは、24歳のときに乳がんを経験。闘病後、自分にしかできない仕事があると、がんに影響を受けた人や家族をサポートするための「マギーズ東京」を開所します。(全3回中の2回)

がん患者が安心できる場所を作りたい

── 鈴木さんが共同代表理事を務める認定NPO法人が運営する「マギーズ東京」とは、どのような場所なのでしょうか?

 

鈴木さん:「マギーズ東京」は、がんを経験している人や家族や友人、遺族、医療者など、がんに影響を受けるすべての人が、無料で利用できる場所です。運河や緑を眺められる環境のなか、がんに詳しい看護師、心理士と友人のように話をしたり、グループプログラムに参加したり、また、お茶を飲み、ゆっくり過ごしながら、自分の力を取り戻す支援を無料で行っています。

 

イギリスの造園家マギー・ジェンクスさんが自身のがん体験から「治療中でも、患者ではなくひとりの人間でいられる場所と、友人のような道案内がほしい」と願ったのがきっかけで始まった「マギーズキャンサーケアリングセンター(マギーズセンター)」の日本版です。1996年に生まれたマギーズセンターは、今ではイギリス内に20か所以上、香港やスペインにもあります。日本では、2016年10月に私が共同代表となり、オープンしました。

 

マギーズ東京
運河や緑を眺められる「マギーズ東京」

── 2017年1月から、鈴木さんは日本テレビでキャスターとして活躍されています。会社員と両立しながら設立から携わったのでしょうか?

 

鈴木さん:私は2008年、24歳のときにステージ3の乳がんになり、闘病生活を送りました。手術後に治療しているなかで、乳がんを乗り越えがん患者の生活をサポートするサロンを運営している、曽我千春さんと出会いました。彼女の闘病生活やその後のがん患者を支える活動を聞き、とても勇気をもらいました。そして、ロールモデルの存在はとても力になることに気づいたんです。私自身、乳がんになってから数年後の人生を生きる彼女のお話を聞いて希望を持つことができるようになりました。そして、私もいつかがんになって困っている人のために、役に立ちたいと思うようになりました。

 

そこから乳がん患者に向けたお役立ち情報をまとめたフリーペーパー「Present」の制作、若年性がん患者団体「STAND UP!!」の立ち上げ、孤独を感じているがん患者が習い事にいくように参加できるワークショップを開催するプロジェクト「Cue!」 の発足など、さまざまな取り組みを行いました。「Cue!」では家と病院の往復だけの生活や職場で疎外感を感じているがん患者のために、ヨガやウォーキングなど居場所となるようなイベントを開催していました。

 

そのような活動を通して、がんになった人がいつでも訪れることのできる常設の場所を作りたいと考えていたのですが、そのときに知ったのがマギーズセンターでした。

 

── それまでマギーズセンターの存在は知らなかったんですね。

 

鈴木さん:そうなんです。海外での国際会議に参加させていただいて知り、調べたところ、マギーズセンターは、がんに影響を受けた人がいつでも気軽に訪れ、お茶を飲み、医療の専門家に治療や日々のことを相談できる場所だと。 それを知った瞬間に「私が作りたいのはこれだ!」と思いましたね。

 

すぐにマギーズセンターをモデルにした「暮らしの保健室」という施設を運営していて、のちに一緒に共同代表を務める秋山正子さんに話を聞きに行き、土地を探したり資金を集めたり、設立に向けて奔走しました。このような活動していた私がそれまでマギーズセンターのことを知らなかったのは不思議なくらいなのですが、「こういう施設が作りたい」と考えた必要なタイミングに知れたということなのだと思います。