家の前で待ち伏せされたり、追いかけられたり
── 高校生のときには、見知らぬ男性から硫酸をかけられたこともあると聞きました。
松本さん:あれは本当に怖いできごとでした。通学中、見知らぬ男性に突然、小瓶の液体をかけられて…。とっさに背中を向けてよけたので肌には直接かからずにすみましたが、制服の上着が真っ白に変色していて。警察に駆け込んだところ、硫酸だったとわかりました。
── 想像を絶するようなできごとですね…。
松本さん:家を探して待ち伏せされたり、追いかけられたり、さまざまな恐怖がありました。いまの時代であれば逮捕されてしまうような事件になりかねないですよね。家族も危険にさらされ、家を何度か引っ越しています。いちばんつらかったのは、母のことを週刊誌で悪く書かれたことでした。まるで母が私の芸能界引退を主導したかのように報じられてしまって。芸能界を離れると決断したのは私でした。でも、母は私を守るため「自分が決めたこと」と矢面に立ってくれたんです。私の意思を尊重し、最後まで寄り添ってくれた。それがすごくありがたかったです。
友だちと出かけたり、バイトをしたりする高校生活の中で、社会で生きていく等身大の感覚が自然と身についた気がします。あのとき意思を貫いて、芸能界と距離を置く経験があったからこそ、「自分の軸」を守れることができるようになったのだと思います。
── 立ち止まって自分を見つめる時間が必要だったのですね。
松本さん:そう思います。最近は、俳優さんでも独立して副業を始めたり、会社を立ち上げたりする方が増えていますよね。自分の心の声を聞き、世間体や周りのルールに流されず、やりたいことに挑戦しやすい時代になったのは、本当に素晴らしいことだと思います。

── 高校卒業後、芸能活動を再開されています。どんな気持ちの変化があったのでしょう?
松本さん:芸能界を離れ、ふつうの生活を送るなかで、「私らしさ」は取り戻せたけれど、環境そのものはあまり変わりませんでした。外出先でカメラを向けられたり、バイト先までついてこられたりと、自由がないと感じていたんです。
そんななか、いくつかの芸能事務所から活動再開をあと押しする声をかけていただき、どうするべきか迷いました。このまま不安と窮屈さを感じながら日常を続けていくか、あるいは「松本莉緒」としての活動を通じて、自分の夢や可能性をもう一度探してみるのか。悩んだ末、後者の道を選びました。