美容にかける時間を手放した40代
── 仕事でお忙しい日々を過ごしていたと思いますが、40代はいろんなものを手放したと伺いました。
東村さん:40代は「息子と過ごす時間を増やす」と決めて、子どもとの時間を優先してきました。でも漫画の締切は待ってはくれないので、出かける暇がなくて。自分にかける時間、主に美容にかける時間を手放し気味だったかもしれませんね。
というのも、美容室にネイルにまつエク、あとはエステなど、全部のメンテナンスを完璧にしようと思ったら週に1度は何かしらの予定が入ることになります。行き帰りの時間も考えたら、週に2~3時間は確実に埋まる。子育てと仕事の両立を考えると、その時間がもったいなかったんです。平日の日中は集中して仕事をして、夜と土日は息子と過ごす。そのおかげで息子が中高生のころは、一緒に過ごす時間が長く、たくさんの思い出を作ることができました。

しかし、最低限でも肌だけはきれいにしていたかったのと、肌管理は一度の施術で効果が長続きすることもあり、美容クリニックはたまに通っていました。ネイルはすぐに伸びるし、私は仕事柄、自分の爪を見るのは主に自分ということで諦めました。まつエクも、「私のまつげが長かろうが短かろうが、もういいんじゃないか」とあるとき思って(笑)。今は少し時間に余裕が出てきたので、「肌と髪のツヤツヤ状態だけは保とう!」という信念のもと、美容はその2つを意識しています。
── 美容にかける時間を削ったものの、肌と髪の美しさはキープ、ですね。
東村さん:体型に関しては健康的であればいいかなと思ってます。好きなものはおいしく食べたいですし。あと、40〜50代で無理なダイエットをすると髪が抜けたり、顔がげっそりしたりすると聞くので、「それはかえって老けて見えそうだな」と、むしろあまり痩せないように気をつけています。“ふっくらツヤツヤ”な50代を目指したいです。まあ、おいしいものを食べたい言い訳なんですけどね(笑)。
── 今年50歳になると伺いました。どんな50代にしたいですか。
東村さん:50代はラブストーリーを描きたいなと思っています。大人の女の人が読むラブストーリーをたくさん描きたい。それも、読む人が夢見られるようなゴージャスなものを。今の世の中、現実が少し世知辛いじゃないですか。物価高で景気も悪い。そんな時代だからこそ、現実ではなく「夢」を描きたい。大人の女の人たちがときめける作品を描いていく50代にしたいと思っています。
取材・文/内橋明日香 写真提供/東村アキコ