心に余裕がないなら助けないほうがいい
── 家の外での生活はいかがでしょうか。Xでは、点字ブロックに関する投稿も頻繁にされていますね。

濱田さん:はい。大阪の梅田とか難波は観光客がものすごく多いので、点字ブロックの上を歩いているときに人とぶつかることがよくあるんです。そういうとき「すみません」って謝ってくれる人もいるし、何も言わずに通りすぎる人もいるし、怒ったような感じで文句を言ってくる人もいるし、舌打ちする人もいるし…。いろんな対応をされます。相手が「すみません」って謝ってくれるタイプなら、こっちも「すみません」って言いますし、向こうが舌打ちしてきたら、こっちも舌打ちし返します(笑)。
── もし人とぶつかって困っていそうだったら、私たちは声をかけたほうがよいのでしょうか?
濱田さん:僕自身はどっちでもいいです。声をかけて助けてもらったら「ありがとう」っていう気持ちになりますけど、別に声かけてもらわなかったとしても、自分でどうにか対応するようにしているので、それが「悪いこと」だとは思いません。助けは強要するものでもないので。
でも、なかには「声かけられたくない」という人もいるみたいなので、難しいですよね。そういう人にとっては「声をかける」ことが「悪」になってしまいますから…。なかなか「これ」という正解は言えなくて。

── なるほど。では、助けるときには、どのようにするべきでしょう?
濱田さん:これも難しいですよね。その障害者の性格にもよりますし…。ただ、助けようと思ったときに、「障害のある方にいきなり声をかけたら、びっくりされるんじゃないかと躊躇してしまう」という話を聞いたことがあるんですけど、それって別に「目見えてようが見えてまいが、いきなり声かけられたら普通にびっくりせえへん?」と思うんですよね。だから、そこを気にする必要はないかなとは思いますね。
基本的には、もし目の前に困ってる人がいたとしても、そのときの自分に余裕がなかったら無理して声かける必要はないかなと僕は思ってます。「人を助ける」って自分に余裕がないと難しいことだと思うんです。今、自分の気持ちに余裕がないとか、時間がないとか、急いでるとか、そういうときは、困ってる人のことよりも自分のことを優先していいと思います。そういう状況のときに、他人に気を配るなんて無理ですからね。
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ほとんど目が見えない状況ながら、子どものころからの「お笑い芸人になる」という夢を叶えた濱田さん。2018年には「R-1ぐらんぷり」で優勝し人気芸人の仲間入りを果たしますが、いまだに「仕事がなくなるのでは」という不安が拭えないそうです。
PROFILE 濱田祐太郎さん
はまだ・ゆうたろう。1989年9月8日生まれ。先天性の緑内障による視覚障害を持ちながら、ピン芸人として活躍している。2018年の「R-1ぐらんぷり」で優勝。YouTubeチャンネル「濱田祐太郎 Official」では、日々トーク動画を更新中。5/30には初の主演舞台『盲目のお蕎麦剣士が巻き起こす新喜劇』が開幕予定。
取材・文/髙木章圭 写真提供/濱田祐太郎