尼さんの言葉が人のありがたみを知るきっかけに
── 自分にとって大きな存在が欠けた穴は、どうやって埋めるものでしょうか?救いになったことはありますか?
萬田さん:やっぱり俳優という仕事があったから、まだ救われたのかもしれません。大切な人を失ったときも、わりとすぐ仕事に復帰しました。お仕事をしている間だけはちょっと忘れられるから。きっと周りの人たちはすごく気をつかってくれていたでしょうけど。あと、習いごとがすごく増えましたね。お茶もそのひとつで、はじめてもう10数年になります。ひとりになって、大切な人と過ごした時間を何とか埋めなきゃ、この時間を何とかしなきゃ、という気持ちがあったのでしょう。
最終的に救いになったのは、ある尼さんの存在でした。大好きな尼さんが京都にいて、その方とちょっとお話ししたことで、不思議とスッとしました。心が解きほぐされた気がして、そこからみんなの言葉がだんだん素直に受け入れられるようになって。家族や友だちのありがたみが改めてわかったんです。だから、人って、やっぱり人に助けられるのかもしれません。彼が遺した言葉「僕の最高の財産は素晴らしい人達との出会いです」、これが年々熟成されて、私の姿勢により彩りを与えてくれています。
PROFILE 萬田久子さん
まんだ・ひさこ。1958年4月13日生まれ、大阪府出身。1978年にミス・ユニバース日本代表選出され、1980年NHK連続テレビ小説『なっちゃんの写真館』で俳優デビュー。テレビ、映画のほか、CM、ファッション誌などでも活躍。著書に『萬田久子 オトナのお洒落術』(講談社刊)。
取材・文/小野寺悦子 写真提供/グランパパプロダクション