生きていると、出会いもあれば別れもあります。芸能界で長く活躍し、最近は美容本の出版が話題になった萬田久子さん。別れによるつらい思いを払拭できたのは、ある尼さんの言葉だったそうです。(全4回中の4回)
ワンちゃんがなくなったときは涙が止まらなかった
── 長年、芸能界で活躍する萬田さん。これまでたくさんの素敵な出会いもあったと思いますが、時間の経過とともに別れも増えてくると思います。萬田さんは身内や愛するペットを亡くしたとき、どういったお気持ちでしたか?
萬田さん:この前、ワンちゃんが亡くなったんです。もう悲しくて、いつまでも涙が出るんですよね。でも、あるときペット仲間の方に「ワンちゃんたちが亡くなると虹の橋を渡る。久子ちゃんはまだまだ生きていて、ちょっとだけワンちゃんが先に行った。久子ちゃんが亡くなるまで、橋のたもとで待っていてくれているわよ」と言われて、ちょっと腑に落ちたんです。なんだか寂しさがやわらぎました。
死というものについて、やっぱり昔よりいろいろ考えるようになりました。年齢のことは言いたくはないけれど、年を重ねるにつれ、病気になったり、亡くなる方が周りに増えてきたり。死について考えると「より今を楽しく大切に」と思います。
私が53歳のとき、30年連れ添ったパートナーを亡くしています。彼は60歳でした。あのときのことを思い出すと、いまだに涙ぐんだりもします。でも、当時は悲しいという感じではなくて。涙もあまり出ませんでした。あのときは突然で、自分のなかでわけがわからなかったです。両親の死ともまた感覚が違いました。余裕のない悲しみだったのかもしれません。彼がいなくなって「これからどうするの」という感じです。当時は余裕がなくて悲しむことができなかったけれど、いまはちょっと余裕があるから、泣くこともできるんです。
お酒を飲む量が増えた訳「現実を忘れたくて…」
── 愛する存在が亡くなったときに助けになるのは、お子さんやお友だちだったのでしょうか?
萬田さん:人によってはお子さんの存在に助けられる人もいるでしょうけど、私はそうではなくて。もともと自分の子どもが欲しくてしょうがないというようなタイプではなく、大切な人の子どもをたまたま授かった感じでした。ただ、生まれたときは本当にうれしかったし、当時は俳優をやめて子どもと一緒にニューヨークで生きていく覚悟でいたくらいです。でも、子どもにべったりという感じではなくて、どちらかというと放任主義。健康で優しい子に育ってくれればそれで充分だと考えていて。いまでは彼に似てきて、たまには頼ったりもしますよ(笑)。
友だちもいっぱいいて、みんないろいろ声をかけてくれたけど、やっぱり彼の代わりにはなりません。慰めに来てくれたりしても、なんかどうしようもないんですよね。もちろん友だちの言葉はすごくありがたいんです。でも、慰めになるのはその一瞬だけ。ご夫婦で慰めに来てくれたりすると、仲がよくていいな、なんて。心から心配して来てくれているのに、失礼ですよね(笑)。みんな手を差し伸べようとしてくれていたけど、当時は周りをシャットアウトしていました。自分からどこかへ行って、気を紛らわせるようなこともありませんでした。かわりにいまと違って、当時はかなりお酒を飲んでいたと思います。身体にはよくないけれど、それで少しでも現実を忘れようとしていました。