「人前で歌う、演奏する」は音楽授業に必須でない
── 生徒がなるべく負担を感じない評価方法はないのでしょうか?
コギトさん:歌唱指導が上手な教師は、生徒にテストだと意識させることなく歌唱させたり、自然な流れでひとりずつ歌う場面を作ったり、生徒が負担を感じない方法をとることができるそうです。でも、すべての教師が同じようにできるものではありません。
現在は、ICT教育により生徒一人ひとりが持つ電子端末を使用する動きも広がっています。教師が伴奏音源を提供し、各自が自宅などで単独録音したり、授業で一斉に歌いながら端末に自分の声を録音して、それを提出する形式です。私も、教員の間で広がりつつあるこのアイデアを採用し、今年から「成績として評価する最低ラインは、伴奏音源にあわせて各自録音した動画を提出」にする予定です。クラスで歌いたい人がいれば発表してもらいますが、おそらくひとクラスに2、3人程度になるでしょう。
── 各自の録音提出で済めば、生徒の恥ずかしさやストレスもずいぶん軽減するでしょうね。わが家の小学生の娘も、リコーダーの宿題を自宅で電子端末に録音して提出しています。小学生でもできますし、いい解決法だと思います。
コギトさん:ただ、このやり方がパーフェクトと言えないのも難しいところです。人前で何かを表現する行動は高校や大学、社会人になってからも、たとえばプレゼンやスピーチなどで誰もがやらなければいけない場面に遭遇します。歌であっても、緊張感や表現などの工夫を含め、人前での発表を経験しておくことで、将来的にプラスになるかもしれません。人前で歌うテストをすべてなくしてしまってよいのか、考えるべき点は多いです。