「新ネタを試す時間がなく」ライブの緊張感はいまも
── 松陰寺さんがネタを作っているそうですね。シュウペイさんとのネタ合わせはどのようにされているのでしょう。
松陰寺さん:昔はお客さんに見せながらブラッシュアップしていく作業が多かったですね。まず僕がネタを作って、劇場で2、3時間稽古して舞台に出る。そこでの反省点を踏まえて、また次のライブに出る。それを何回かやっていいネタができたら、オーディションに持っていっていました。ただ、最近は単独ライブが新しいネタをみせる場所になっているので、誰かの前で試すような機会がなくて、いきなり本番。ウケるか、ウケないかわからないので、やっぱり緊張します。

── 現在のポジティブ漫才になったのはいつごろからですか?
松陰寺さん:ポジティブ漫才を始めたのは2018年の初めだったと思います。なんでそうなったかというと、それまでのネタが単純にウケなかったから。「誰かが誰かを傷つけ合う世の中に一石を投じた」なんて言われることもあるけど、僕らの中ではそういう意識はまったくなかったですね。ツッコみそうでツッコまないんだ、というただの裏切りです。
でも、考えるとおもしろいですよね。いまの時代はどつき漫才は痛いといわれるけれど、10年前だったらそんな感覚にはならなかったはず。時代がちゃんとアップデートされてきている。昔のお笑いがよかったという人がいますけど、でも、何も変わらないままだと漫才は伝統芸能になっちゃう。この先、漫才が発展していくためにもアップデートしていかないといけないな、と僕は思っていて。