「ポジティブ漫才」だけでは終わらせない
── ぺこぱさんのポジティブ漫才も、この先時代に合わせてスタイルを変える可能性はあるのでしょうか?
松陰寺さん:いまの芸風で僕らを知ってくれた人、あの漫才を見たから好きになったと言ってくれる人がいるから、代名詞としてやらなきゃとは思っています。同時に、新しいことに挑戦したい自分もいる。お客さんを裏切るのはひとつのお笑いの手法だから、あまりスタイルを決めなくてもいいのかなとも思って。それに、やっぱりワクワクできるのって、新しいことなんですよね。

このネタ、お客さんの前でやったらどうなるだろうな、っていうドキドキが最近あまりなくて。単独ライブで新しいネタをやること自体はワクワクするけれど、見に来てくれているお客さんは、僕らのことをよく知ってるファンの人たちが多いんですよね。だから、笑ってくれる安心感はあります。昔はひと笑いもないまま終わってしまうかもしれないスリルをよく味わっていて、あの感覚も嫌いじゃなかったなって思っちゃう(笑)。
いずれにせよ、漫才はずっとやっていきたい。新しい人がどんどん出てくるし、消費のスピードはすごく早いから、誰がどんなにブレイクしたって、飽きられる時期は必ず来るはず。それに、芸人のあり方がすごく多様化してきていて、いまは発信のしかたもいろいろあるし、テレビだけが主戦場ではなくなっていることを実感します。だから、やっぱり変わり続けないとこの世界では生きていけない。あまり古い価値観にとらわれないようにしなきゃな、とは思っています。
PROFILE 松陰寺太勇さん
しょういんじ・たいゆう。1983年11月9日生まれ、山口県出身。お笑い芸人ぺこぱのネタ作り担当。ピン芸人として活動後、2008年にシュウペイとコンビ結成。「M-1グランプリ」2019で決勝に進出しブレイク。全肯定ツッコミで人気を博す。現在のレギュラー番組に『THE 突破ファイル』『ヒルナンデス!』など。
取材・文/小野寺悦子 写真提供/サンミュージックプロダクション