野際さんが病を患い仕事減少…同時期にシンママに
── 化け子さんが40代のころ野際さんが病気を患い、仕事が少なくなっていったそうですね。
化け子さん:そうなんです。お仕事をセーブされていて…。当時、私は野際さんのお仕事が頼みの綱になっていたので、野際さんがいなければ自立できないという現実を思い知りました。同時期に離婚して2人の子を育てるシングルマザーになったのですが、ちょうど長男が中学生で、これからお金がかかるタイミングだったんです。
── それは不安になりますね。
化け子さん:減ったとはいえ仕事もそれなりにあったのに、心の中は不安に支配されて、いても立ってもいられなかった。心臓がぎゅっと締めつけられるような不安をどうにかしたいと思って、空いた時間にアルバイトを始めました。平日は運送会社で荷物の仕分け作業やベビーシッターを、土日は写真館でヘアメイクをやっていたんですが、本業と比べるとそれほどお金にならない。子どもたちにかかる費用は惜しみませんでしたが、自分にお金をかけるなんて考えられず、節約のために1000円カットに行って、白髪染めは自分でやっていましたね。
当時、周りの人からは大変だねって気づかってもらうことが多かったせいもあり、「私はかわいそうな人間だ」と思い込んでいたんです。今振り返ると、完全に自分を見失っていた“黒メンタル期”だったなと思います。
── 黒メンタルから抜け出すきっかけは何だったのでしょうか。
化け子さん:運送会社のバイトで荷物を下ろすときに、2トントラックから足を滑らせて落ちてしまい、大事な右手の手首にヒビが入ってしまって。その3日後に野際さんの仕事が控えていて、代わりも立てられず絶対に穴を開けられない状況でした。とにかく痛みをおさえて仕事ができる状態にしたいと、必死で名医を探して。結局、バイトは全部キャンセルして病院に行き、なんとかヘアメイクの仕事はまっとうできました。でも、そのときに「バイトのせいで本当にやりたい仕事ができないなんて本末転倒だ」と痛感して。私が得意なのはずっとやってきたヘアメイクだし、みんなに喜んでもらっているじゃないかって。もうこれ1本で行こうと決意しました。
── 仕事への意識も再認識できたと。
化け子さん:そうですね。そのころ偶然、コーチングというものがあると知って。人の能力を最大限にのばして目標達成できるように促す人材育成の手法なのですが、自分の感情を冷静に見るための理論を学べるというので、不安を払拭したい私に最適かもしれないとスクールに申し込みました。
実際に習ってみたら、仕事のときに自分で意図せず女優さんに対してできていたことはあったけれど、自分自身にはまったく応用できていなかったことに気づいて。そこから、少しずつ客観的に自分のことを見られるようになりました。そうしたら、自分はかわいそうな人間だと思い込んでいたけど、俯瞰で見ればヘアメイクの仕事はあるし、野際さんのような素晴らしい女優を担当させてもらって、全然かわいそうじゃないじゃん!って気がついて。自分で自分を縛っていたことに気づいたら、霧が晴れたみたいにすっきりしたんです。そこで、今こそずっとやりたかったことをやってみようと思い、勇気を出して金髪にしたんですよ。
