裏方で地味だったのが一転金髪に…野際さんはまさかの反応

── 化け子さんのトレードマークの金髪はそのときからなんですね。

 

化け子さん:はい。金髪にしたのは、野際さんの最後の出演作品になった『やすらぎの郷』(テレビ朝日系、2017年放送)を撮影していたときです。当時、野際さんは抗がん剤の影響もあって身体的にも大変なのに、セリフを誰よりも完璧に覚えて、見事に演じきっていらっしゃいました。こんな状況のなかで、裏方の私が金髪にするなんて、野際さんご本人や周囲の人から不謹慎と思われないかなとか、実は反応が怖かったんです。でも、それは私の取り越し苦労で。金髪の私を見て、野際さんが「あら、いいじゃない」って言ってくださったんです。心身ともにしんどい時期だったのに…忘れられない言葉です。

 

化け子
ヘアメイクのテクニックをわかりやすく伝えるYouTubeが人気

── 化け子さんを認めてくださっていたからこその言葉だったのでしょうね。

 

化け子さん:野際さんは、一度決めたことを長く続ける方でした。だから、私のことも特に気に入っているわけじゃないけれど、最初に頼んだからめんどうを見てくださっているのかな…なんて思っていたんです。だからこそ、「いいじゃない」って言ってくださったときは、たったひと言でしたけど、認めていただけたようですごくうれしくて。

 

その後、入院されてからは、心の準備を進めながら病院に通い、一緒にいる時間を大切に過ごしました。

 

その時期に野際さんが私を頼ってくださったことも、やっぱりうれしかったですね。たいしたことじゃないのに、よく「ありがとう」って言ってくださって。それまでも同じように声をかけてくださっていたはずなのに、病室に通っていた時間は野際さんの気持ちがひときわ素直に受け取れた気がします。人生の恩人である野際さんには本当に感謝していますし、今も折に触れてその言葉を思い出し、背中を押してもらっています。

 

PROFILE 化け子さん

ばけこ。本名・岸順子。1966年、岡山県岡山市生まれ。現役のヘアメイク職人として芸能界で35年以上にわたり活躍を続け、トップクラスのベテラン女優から数多くの指名を受けている。そのキャリアを活かして54歳でYouTubeチャンネル「ヘアメイク職人_化け子」を開設。加齢の悩みを解消するプロのテクニックをわかりやすく解説し、登録者数は40万人を超える。今年6月に5冊目の書籍『化け子のオキテ。』(主婦と生活社)を上梓。

 

取材・文/小新井知子 写真提供/化け子