感情をむき出しにできる相手と出会い
── 支援活動を通してさまざまな人や若者たちと関わってきたなかで、ご自身の人生に何か変化は感じられましたか?

ブローハン聡さん:はい。実は昨年(2024年)9月に結婚して、家族ができました。
── それはおめでとうございます!
ブローハン聡さん:ありがとうございます(笑)。パートナーとは、僕が出演していた番組の共演者の方の紹介で知り合いました。最初は仲間3人で食事をしていたんですけど、だんだんと2人で会うようになって。彼女から「早く告白しなさい」と言われて僕から告白しました(笑)。

当時の僕は、日々いろんな若者と向き合っていたこともあって、自分の価値観や感情にも正直に向き合わざるを得ない場面が増えていました。彼女との関係でも何度かぶつかることがあったんです。そのたびに「ああ、僕ってこんなふうに怒るんだな」と、自分でも驚くくらい感情があふれ出ることがあって。それまで押し込めてきた感情を、少しずつ解放できたことは、自分にとって大きな変化だったと思います。
── 結婚に憧れながらも、家族をつくることに不安を抱えている人も多いと思います。
ブローハン聡さん:僕もまさにそうでした。ずっと「家族」というものに対して恐れがあったし、「ひとりで生きていくのも悪くない」と本気で思っていた時期もあります。日本でも海外でも、どこにいてもどこにいなくても構わない、そんな感覚でした。
それもあって、僕はこれまで3年に1度は自分のコミュニティを変えてきました。一定の距離感で人と関わっていたほうが楽だったし、深く関係性が築かれるのが怖かったんです。子どものころに傷ついてきたぶん、自分も誰かを傷つけてしまうかもしれないと、ずっと不安だったんだと思います。
でも、若者たちと向き合う支援活動の中で、自分の感情や過去にていねいに向き合うようになって。パートナーとも何度も話し合い、ぶつかりながらも前に進んできました。その過程は簡単ではなかったけれど、自分にとってはとても大切な時間だったと思います。そして今では、「家族」という簡単には離れられない存在を、ちゃんと“愛おしい”と感じられる自分がいます。
── “愛おしい”と思える存在に出会えたこと、すごく素敵だと思います。いま、大切にしているのはどんな時間ですか?
ブローハン聡さん:やっぱり、家族と過ごす時間ですね。結婚してから、自分にとって「家」が本当の意味で“帰る場所”になりました。人生の中で、「よかった」と思える変化のひとつです。
PROFILE ブローハン聡さん
ブローハン・さとし。1992年、東京都生まれ。一般社団法人コンパスナビ代表理事。フィリピンとスペインと日本のハーフ。11歳~19歳の8年間、東京都の児童養護施設で育つ。卒業後は、看護助手や携帯電話の販売員を経てモデル・タレント活動を開始。「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」や「東京ボーイズコレクション」にも出場。同時に、一般社団法人コンパスナビの活動に参画し、2024年10月、代表理事に就任。著書に『虐待の子だった僕―実父義父と母の消えない記憶』がある。
取材・文/高梨真紀 写真提供/ブローハン聡