息子が1か月も登園拒否「必死の説得も成功率0%」 

寺田ユースケと息子
息子さんをひざに乗せる寺田さん

── 車椅子で子育てをするうえで、大変なところは何ですか?

 

寺田さん:これは、まさに今がいちばん大変な状況です。息子が保育園に行きたがらなくなってしまって…。登園拒否が1か月ほど続いているんです。「魔の2歳」と呼ばれる時期にもイヤイヤ期はあったのですが、4、5歳のイヤイヤ期は体が大きくなって体力がついているので、かんしゃくを起こして暴れたときに、車椅子の僕では抱きかかえることができません。機嫌がいいときであれば「パパかめさんに乗って」と言って、僕が四つん這いになった背中に息子を乗せて車まで連れて行き、保育園に行くのですが、暴れているとそれが無理で。

 

妻の場合は、登園時に暴れていても、なかば強引に抱きかかえてチャイルドシートに乗せ、保育園まで連れて行くこともでき、登園してしまえば保育園の先生方がうまくなだめてくださるのですが、僕がひとりのときはそれができない。なので、息子が保育園に行くことを納得するまで話をするのですが、いまのところ成功率0%なんです(笑)。赤ちゃんのころより、よほど大変だなと痛感しています。この1か月、かなり追い込まれてしまいました。

 

── 仕事が進まないし、焦りますよね。

 

寺田さん:新しいことを始める忙しさに、夫婦でケンカというか、言い合うことが増えていたので、子どもを不安にさせてしまったのかも、と猛省しています。勤めている会社にもこのままでは在宅ワークができず迷惑をかけるばかりだと相談をして、いったん休職させてもらっていて、しばらくは息子にとことんつき合おうという気持ちでいます。

 

その間に妻は出張などをこなして新規事業の立ち上げに打ち込めたので、生活のバランスがやっととれてきたところです。

 

── いろいろと大変なこともあると思うのですが、常に新しいことに挑戦し続ける原動力は何でしょうか?

 

寺田さん:それは、結婚前と後で大きく違います。結婚する前は、障がいがある自分が認められず自己肯定感が少ない人生だったので、正直なところ、有名になれば自分のことを知って認めてくれる人が出てくるのでは、という気持ちで芸人やホストに挑戦した部分があると思います。結婚後や子どもが生まれてからは、人の役に立ちたい、そのために自分ができることを探したい、と社会貢献の気持ちが大きくなりました。人の役に立って社会をよくするためには、影響力や発言力を持っていなくちゃいけないので、こうしたインタビューに答えるのも独身時代とは責任感が違います。

 

これからまた「MinQ(みんきゅ〜)プロジェクト」という新しいことを始めますが、妻も仲間たちも自分の特性や体調のことを理解してくれているのが心強いです。障がいがあって、パパでもあるけど、自分のやりたいことや仕事をあきらめたくない、という思いが強いです。僕のような人生でも、いろいろな形で人の役に立てるということを示したいです。

 

寺田ユースケと家族
息子さんが車椅子を押す家族写真

 

PROFILE 寺田ユースケさん

てらだ・ゆーすけ。1990年名古屋市生まれ。YouTube「寺田家TV(チャンネル登録者 約10万人)」を運営。先天性の脳性まひのため、首から下が不自由。関西学院大学卒業後、お笑い芸人とホストを経験する。車椅子を押してもらいながら47都道府県を旅する「車椅子ヒッチハイクの旅/HELPUSH(ヘルプッシュ)」を実行後、現在は妻と息子と長野県で暮らす。ユニバーサルツーリズムに関する新規事業「MinQ(みんきゅ~)プロジェクト」の活動に尽力中。


取材・文/富田夏子 写真提供/寺田ユースケ