東京オリンピックで勝ちたいから彼と別れて
── 大学を卒業後、社会人になってから恋愛はどうされていたんですか。
植草さん:空手仲間のひとつ下の後輩とつき合っていました。公につき合っているとは言えなかったけれど、周りはみんな知っていました。彼も学生の日本一を取ろうと頑張っていましたし、私は私で日本一を目指していました。私は組手(二人が相対して対戦する)の選手で彼は形(演武形式)と種目が違っていたのでお互いの存在がすごく刺激になっていましたし、リスペクトもしていました。彼の頑張っている姿はすごくカッコよかったし、つき合っていた時間は本当にすごくいい時間でした。でも2018年の世界選手権で2位になったとき別れたんです。どうしても東京オリンピックで勝ちたいから、空手に集中したいと思って。

── 大学時代もタイトルを取りたいからと恋愛を封印されていましたが、集中力にはすごいものがありますね。
植草さん:日常生活はもちろん大切だけど、当時は空手で勝利を得ることがなによりも幸せだったんです。世界大会2位になったとき、そして日本で2位になったときは、いつも自分は存在価値がないんじゃないかとかと思うくらい苦しくて、泣き崩れていました。ずっと勝負の世界で生きてきたからこそ、そういう思考だったんだと思いますけど、だからこそ今は空手に集中するときなんじゃないかって。
── 選手と指導者、両方の立場を経験されましたが、アスリートの恋愛に関しての植草さんのスタンス、考えはいかがですか。
植草さん:私は月曜から土曜まで一生懸命練習を頑張って、日曜日に彼氏に会ったり、遊ぶ時間や練習が終わって一緒に夕食を食べにいく時間がすごく幸せでした。その時間があるからこそ練習も頑張れる。間違いなくパワーの源になっていました。ただ、若いころは心をコントロールするのは簡単じゃない。未熟なときだからこそ、共依存にならないようにだけは気をつけてほしいですね。
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恋愛自体は人を成長させ、人への接し方やコミュニケーションも教えてくれたという植草さん。「恋愛のおかげでいい意味で変わっていくことができました」と、思春期から恋愛をしたことが人生経験に繫がっていると実感していると言います。そんな現役時代を過ごした彼女は今、指導者としての道を歩みながら、モデルという新たなチャレンジにも挑んでいます。
取材・文/石井宏子 写真提供/植草歩