「ありのままの自分でいいんだ」と思えるように
── 昔に比べると、セクシャル・マイノリティへの理解は深まっているように感じますが、滝沢さんはどう思われますか。
滝沢さん:ここ数年でテレビや新聞などでも「LGBT」「セクシャル・マイノリティ」という言葉をよく聞くようになったと思いますし、多様性が認められている時代となり、それがその人の個性だという認識も高まっていると思います。多くの企業でも多様な性のあり方を理解し、活躍できる職場づくりをされていると思います。ただ実際は、自分の身近にいる存在が当事者かもしれないという意識があるかどうかといえば、それはまた別の問題なのかなとも感じていて。自分の隣の席の人や、家族や親友のなかにセクシャル・マイノリティの人がいるかもしれない。そういった想像はまだまだたりていないと思うので、私も積極的に発信できたらいいなと考えている部分です。

── 滝沢さんはSNSなどでもセクシャル・マイノリティに関して発信されています。滝沢さんが今伝えたいことはどんなことでしょうか。
滝沢さん:カミングアウトしたときは同じ立場の人に「仲間はいっぱいいるよ」と勇気や元気を与えられたらいいなと思っていました。でも、最近はマジョリティの方にあなたの周りにもマイノリティの方がいるかもしれないことを伝えたいと考えています。
── 令和7年度の中学3年生の道徳教科書に滝沢さんのお話が掲載されました。率直な感想、思いを聞かせてください。
滝沢さん:子どものころからセクシャル・マイノリティの情報に触れる機会を作ってくださって感謝の気持ちが大きいです。ただ、受け入れるも受け入れられないもそこは人それぞれの考え方なので強要することはしたくないです。それでもセクシャル・マイノリティの人が友達にもいるかもしれないということや、友人からカミングアウトされた時どう思うかな?など考えるきっかけになってくれたらうれしいですね。
── DMなどでもマイノリティの方から悩みを相談されることが多いそうですね。
滝沢さん:家族、とくにご両親へのカミングアウトに関する悩みが多いですね。どんな反応なのか、理解してもらえるのか。子どものカミングアウトに親側はどう向き合うか、どう声をかけるべきか、すごく悩むべきところではあると思います。ただ、子どもにとって親は誰よりも大きな存在。親の理解があるだけでも心の強さは全然違います。結果、親子や家族の生きやすさにもつながってくるのかなと思いますね。
── 自分らしく生きることは簡単なようで難しいことでもありますよね。
滝沢さん:セクシャル・マイノリティの方はとくに、自分らしく生きようとすればするほど、周りの目が気になり、生きづらさを感じてしまうかもしれません。ただ、自分らしく生きられている方が気持ちも前向きにいられるし、楽しいと思うんです。だから「ありのままの自分でいいんだな」と思ってもらいたい。私も、今、もちろん悩みがまったくないわけではありませんが、ありのままの自分で生きられていると思いますし、それは親の理解があったからこそだと感謝しているんです。
取材・文/石井宏美 写真提供/滝沢ななえ