22歳で自身の性的指向に気づいたきっかけは

── 幼少期のころも恋愛対象は男性だったのでしたか?

 

滝沢さん:小学生って「好きな子は誰?」という話題をよくするじゃないですか。その時は男の子だったし、女の子を好きだったという記憶はないんですよ。ただ、小学生のころからバレーボールをしていて同性で憧れの先輩はいました。でも今、考えると、それは憧れじゃなくて好きという感情に近かったのかもしれません。

 

── 女性を好きなのかもしれないと気づいたのは、何かきっかけがあったのでしょうか。

 

滝沢さん:モヤモヤした思いが晴れたのはバレーボール選手になってからですね。22歳のころでした。ドラマ『ラストフレンズ』で上野樹里さんが演じていた性同一性障害の女性を見て、いろんな性自認があることや身体が女性であったとしても女性を好きになることはあることを知ったんです。ドラマを見ているうちに、「自分はもしかしたら女性の方が好きなのかもしれない」と、すごく近くなった感じがしました。私の場合はそれに気づいたのが22歳だったので、ほかの人に比べると少し遅いパターンかもしれません。

 

滝沢ななえ
現在は都内にジムを構え、パーソナルトレーナーとして活動している

── ドラマをきっかけに自分がセクシャル・マイノリティであることに気づいた後、何か行動を起こしましたか。

 

滝沢さん:新宿2丁目のようなリアルの場に行ってみるという方法もあったと思うのですが、私は飲みの場が苦手だったこともあって、同性愛者の方が集まるようなSNS上のコミュニティに参加して、ネット上で当事者の方たちと交流するようになりました。そこで同じ境遇の人達と会話をするうちに「私は女性が好きなんだ」ということに気づいたというか、確信したというか。自分を偽ったり、隠さなくてもいい場所というのはすごく居心地がよかったですね。

 

── その後は実際に女性とおつき合いされたんですか。

 

滝沢さん:最初におつき合いした相手とはそのコミュニティで知り合ったのですが、遠距離恋愛だったんです。男性とおつき合いしていたころは電話することもすごく面倒だと思っていたんですけど、その女性とは毎晩のように電話をしたりskypeで話したり、とにかくマメに連絡をとっていました。当時、バレーボール選手として活動していたので、休みはそんなに多くなかったんですが、日曜がオフだったので土曜日の練習が終わると会いに行ったり。時間がないなりになんとか時間を作って、彼女と会っていました。

 

男性とつき合ったころとはまるで違う感情で楽しかったですし、自分のなかでも「これが恋愛なんだ」とか「私、恋愛してるな」という感覚が。恋愛ができないタイプだと思っていたので、自分もちゃんと人を好きになれるんだとわかり、安心できました。

 

── バレーボール選手時代に比べると容姿も変わった印象ですが、ご自身のなかで自分らしさをどんなところで感じていますか。

 

滝沢さん:男性らしくも女性らしくもない「中性的」な感じでいることが自分らしい容姿だなと思っています。

 

 

その後、2017年にテレビ番組で同性愛者であることをカミングアウトした滝沢さん。同じような立場の人の励みになればと思っての決断だったそうですが、親や家族と疎遠になっても構わないという覚悟だったそうです。

 

取材・文/石井宏美 写真提供/滝沢ななえ