「家族になれてとても幸せ」と繰り返し
── 息子さんにはすでに養子縁組について話されているそうですね。
志賀さん: 血縁によらない親子の絆は、ともに笑って泣いて、長い年月を重ねて育んでいくものです。真実告知は息子の年齢に合わせ、繰り返し行っています。息子には、3歳くらいから産んでくれたお母さんがいることを話していますが、それより大切なメッセージとして「あなたは最高の子どもだよ。誰からも愛される大切な存在」「家族になれて幸せ」とていねいに伝えてきました。
私たちの家には、息子が徳島の山で拾った保護猫のニョッキがいます。息子はニョッキに「ニョッキにはぼくたち家族がいるから大丈夫だよ。ニョッキのお母さんは病気や何か事情で育てられなかったけど、もうひとりじゃないよ」と話しかけています。

私たち家族の強みは、家族みんなが誰も血が繋がっていなく、種族すら超えていることです。誰ひとり血が繋がっていないからこそみんな違って、それぞれの個性を大切にできる対等な関係性だと思っています。だから言わなくてもわかってもらえると思うよりも、自分の気持ちはていねいに伝えていこうねと、家族みんなで話し合っています。
── 息子さんも周りの方も理解が広まっているのですね。
志賀さん:「さいたまあゆみの会」は「特別養子縁組が特別でない未来へ」をミッションに活動しています。社会の皆さんには、等身大のリアルな養子縁組家族について知ってもらいたいと願うとともに、息子には自分の背景だけが「特別」ではないことも知ってもらいたい。たとえば、障がいのある人、性的マイノリティーの人、虐待を受けた人など、生きづらさを抱えている人たちは社会に少なくありません。息子にはリアルな体験を肌や目で感じ、積み上げていってほしくて、さまざまなカルチャーのコミュニティに親子で積極的に参加するようにしています。
「家族になれて幸せ」のその先の、家族という閉じた関係性をどこまでも自由に超えていく、社会に開く育児をしていきたいです。
取材・文/松永怜 写真提供/志賀志穂