生みの母の命も、一緒に愛する

── その後、息子さんが2歳のときに里親から養子縁組になったそうですが、どういった経緯だったのでしょうか?
志賀さん:私たち夫婦は、生母さんのお気持ちを大切にしたかったので、里親から特別養子縁組への措置変更を急ぎませんでした。時間をかけて児童相談所とお母さんがやりとりをした結果、特別養子縁組が成立し、法的にも家族となりました。
── 養子縁組が成立したときのお気持ちはいかがでしたか?
志賀さん:息子との別離の不安がなくなり、息子や夫と一緒に、自由に家族の未来が描けることに胸がいっぱいでした。同時に、生母さんを忘れる日はありません。私と息子は血のつながりがないから、はっきり言ってまったく似ていません。でも私は、息子のその生意気な唇が愛おしくてたまらない。ちっとも似てない息子の瞳の形に、太くて真っ黒な髪質の私と真逆の息子の茶色い猫っ毛の髪に生母さんの面影を感じながら、生母さんから息子への一つひとつの命の贈り物に「素敵なギフトをありがとう」といつも心で唱えています。
里親として、息子が生まれてからすぐに一緒に暮らし、かけがえのない日々を重ねて来た今となっては、血のつながらない息子を本気で愛する覚悟は、息子に宿る生母さんの命も一緒に愛することなのだ、と感じ始めています。
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「血縁によらない親子の絆は、ともに笑って泣いて、長い年月を重ねて育んでいくものです」と語る志賀さん。息子さんには、養子縁組であることを伝える「真実告知」を年齢に合わせて繰り返し行い、「家族になれて幸せ」とていねいに伝えてきているそうです。
取材・文/松永怜 写真提供/志賀志穂