娘は「彼氏は作らないで」と

── 離婚の前は相当悩まれたと伺いました。

 

仲宗根さん:自分だけの人生ではなく、娘と2人分の人生を背負っているつもりで、この結論を出しました。やっぱり離婚となると、自分の損得で考えることはあると思うのですが、私の場合は子どもを第一に、具体的に考えてきました。子どもと父親を会わせることができるか、子どもがなるべく傷つかない方法はあるのかなども真剣に考えました。

 

仲宗根泉さん
レコーディング中、真剣な表情の仲宗根泉さん

もし今から離婚して、シングルになるかどうしようと迷っている人がいるならば、自分のプライドは捨てるべきですね。人にシングルであることを聞かれて嫌な気持ちになるくらいだったら、離婚しないほうがいいと思います。それに、お子さんがいる夫婦なら、子どもに対して離婚に負い目に感じるならばやめたほうがいいと思います。「私のせいでこの子がかわいそう」とか、シングルで育てることへの劣等感や恥ずかしさを感じるのであれば早まらなくていいのかなと。自分が恥ずかしいと感じながら、子どもが育っていくのはかわいそうだなって。

 

── 離婚後に子育ての方法で変えたことなどはありましたか。

 

仲宗根さん:私は特にないですね。「父親がいないぶん、父親のぶんも厳しくする」と言って、離婚後に子どもを厳しくしている方がいるんですが、私からしたらそれは自分のエゴじゃないかなって。子どもにも、なぜ厳しくされているのか伝わっていないと思います。それに「厳しさは父親が」というステレオタイプもよくないんじゃないかなって。親がひとりでもふたりでも、人数に関わらず子どもには愛情を注ぐべきだと私は思うんですね。どんな環境であっても、愛されている子は幸せに見えます。

 

── 離婚されたあとの娘さんの反応はいかがですか。

 

仲宗根さん:娘は、私にも元夫にも「彼氏、彼女は作らないで」って言うんですよ。現状、どちらも相手はいないので、もう娘が言うようにこのままでいいかなとも思っていますけど。今さら誰かと一緒に暮らすというのも現実的に考えられなくて。女友達と自由に遊べる今が最高!という境地になっています。

 

仲宗根泉さんの娘
これぞ沖縄の海!大自然のなか、ブランコをこぐ仲宗根泉さんの娘

もちろん、世の中には離婚後に再婚をする方もいらっしゃいますし、それが子どもにとって正解の場合もありますよね。ただ、うちの娘のように、お父さんはこの人だけと思っていて、彼氏は作らないでと言われている以上は、私は娘から父親を奪った責任として、一生独身でいるくらい、娘の人生も自分が背負っていくんだという覚悟でいます。

 

── お子さんを育てる責任と覚悟、ですね。

 

仲宗根さん:人を育てるというのはやっぱり難しいことだと思います。特に心を育てるという意味での責任も感じています。私は、何度も何度も悩んで、本当にこれでいいのかと何パターンもシミュレーションをしてきたうえで今があります。シングルになっても、母親が幸せである姿を見せることで、娘も自信を持てると思うんです。結婚より別れるほうが大変だとはよく言いますが、やっぱりたくさん悩んだうえで行動に移してほしいなという思いがありますね。

 

PROFILE 仲宗根泉さん

なかそね・いずみ。1983年沖縄県生まれ。沖縄を拠点に活動しているバンド「HY」のキーボード&ボーカル。HYは2000年結成。紅一点の仲宗根泉は、ストレートな楽曲と、時には厳しく、時には面白おかしく、個性溢れるキャラクターが男女問わず支持されている。一児の母であり、仕事と家事を両立することの難しさを感じながら、ひとつひとつ向き合いながら歩んでいる彼女のもとには年齢問わず、恋愛相談、人生相談を求める声が多い。HYとしては、バンド結成25周年記念全国ホールツアー開催中。

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/仲宗根泉