がん公表後の心境と「自身の体験談」に込めた想い

── 放送後の反響について教えてください。
京子さん:放送直後から数日間、電話の着信とラインの通知が鳴りっぱなしでした。「いつの間に手術していたの」「気がつかなかった」など驚きの声から、気づかいや励ましの声などをいただき、なかには電話口で泣いてしまう友人もいて「私は大丈夫だから」と逆に励ましたりもしていました。Instagramにもたくさんの方から温かいメッセージをいただきました。その後も、仕事や外出先で会う人に「体調は大丈夫ですか?」と労りの言葉をいただいていて、本当にありがたいなと感じています。
── 治療について打ち明けずにいたという、ごきょうだいからの連絡はありましたか?
京子さん:はい。きょうだい家族からもすぐに連絡が来て「どうして教えてくれなかったの」と言われてしまいました。でも当時は「余計な心配をかけさせたくない」という気持ちが強かったんです。打ち明けたことで、きょうだい家族が忙しい時間を割いて病院にお見舞いに来たり、心を痛めたりしてほしくなかった。手術でがんの部分を取って「スッキリした」という気持ちになれた今だからこそ、話せるようになったんだと思います。
── 乳がんを公表した今、どのような気持ちですか?
京子さん:放送後、夫と「楽になったね」と言葉を交わしました。ずっと乳がんだったことを公表できず、知らせるべき人たちにも言えずにいたので、まずは「伝えられたこと」に安堵しています。
私は、自分の乳がんとの闘病生活を比較的、楽観的な気持ちで過ごしてきました。がんという診断を受けたときも「今、わかってよかった」と受け止められましたし、「悪いものは取れば治る」と単純に考えられたからこそ、全摘出することに迷いもありませんでした。考えすぎず、落ち込みすぎずにいたことで、今「もう大丈夫」と前を向けているように思います。そして、病気の受け止め方も、気持ちの持ち方次第で変わる可能性はあるということに気づかされました。

PROFILE 京子スペクターさん
きょうこ・すぺくたー。(株)スペクター・コミュニケーションズ代表取締役。高校卒業後に渡米し語学を学んだ後、ロサンゼルスのホテルに勤務。その後、デーブ・スペクターと出会い、結婚。帰国後に会社を設立し、テレビの企画やプロデュースなどを手掛けるなど、幅広く活躍する。現在、アルバニア共和国名誉領事を務める。
取材・文/佐藤有香 写真提供/京子スペクター