「幸せは束の間」夫は病に襲われうつ病にも
── スター俳優だった根津甚八さんとの結婚は当時、大きな話題を呼びました。
根津さん:ちょうど皇太子様の結婚と同時期だったので、週刊誌の表紙に皇太子夫妻と私たちのウェディング写真が並んで掲載され、ビックリして思わず笑ってしまったことを覚えています。結婚後は家庭に入り、忙しい夫をサポートしながら専業主婦として過ごし、96年には長男も授かりました。

ですが、幸せな時間は長くは続きませんでした。彼が次々と病に見舞われ、状況が一変したのです。撮影中に腰椎を痛めてヘルニアで入院、その後も膝に負担がかかって満足に走れない状態になるなど不調が続きました。そんななか、2001年には「右眼下直筋肥大」という目の病に襲われました。瞼が垂れ下がり、メディアでも「目がおかしい」と指摘され、彼も気にして色の濃い眼鏡をかけるように。そして、さまざまなストレスが心をむしばみ、うつ病を併発。更年期障害の診断を受け、ホルモン注射療法も行いました。
── 当時はまだ男性の更年期障害はほとんど知られていませんでした。きっかけはなんだったのでしょうか。
根津さん:新幹線の中で、彼が急に滝のような汗をかきだしたんです。いったいどうしたのだろうと病院で診てもらったら「男性にも更年期はありますから」と言われ、驚きました。ホットフラッシュだったんですね。
降りかかるさまざまな病を治すため、病院での治療のほか、北海道の帯広で1か月間温泉療養をしたり、気孔や鍼治療、カイロプラクティック、太極拳、さらには祈祷師や占いにも頼ったりと、ありとあらゆるものに頼りました。仕事ひと筋の彼にとって、お芝居がいちばんの良薬ではないかと主治医に勧められ、自宅で演技を教える「根津塾」を開講したこともあります。ストイックな性分ゆえに、調子がいいと3時間ぐらい指導に熱が入ることも。お芝居を愛する人だからすごく楽しそうでしたが、病状が悪化して継続できず、1年あまりで閉講しました。