息子が母と娘のケンカを仲裁「双子を産んでよかった」
── お子さんたちも、広田さんのお仕事を理解している様子ですか。
広田さん:息子と娘ではそれぞれ私の仕事に対する捉え方が違っていて、娘は「プロレスラーになる」なんて言っていますね。だから試合を見たいとか練習に行きたいと言って、興味があるみたい。息子は「プロレスなんかやれるわけない」って(笑)。
思えば子どもたちが小さいころは、休日に試合があるので遊べないのが親としてはつらかった時期がありました。会場に向かう途中で、公園の前を通ると「遊びたいから降ろして!」と言ってきたこともありますし。

── フリーランスの場合は子どもと過ごせる時間があっても、仕事を優先しなければならないのでバランスを取るのが難しいですよね。
広田さん:ましてや、レスラーは土日祝日がほとんど仕事なので。子どもを育てるうえでプロレスを続けることは子どもの幸せを奪うことではないのだろうかと葛藤しました。でも結局、子どもたちにいつ宿題をやらせようとか、親の悩みってだいたい同じだよなって思って。子どもたちを叱ったあとに、「こんなことであんなに怒る必要なかったかも」って気づいたり。そういうこと、ありますね。
── よくありますね(笑)。ちなみに、双子でよかったなと思ったことはありますか?
広田さん:親子ゲンカになったりすると、どちらかが仲裁に入ってくれるんです。私と娘が言い合っていると息子がおどけて間に入ってきたり、娘の好きな人形をそっと抱かせたりして、気づかってくれて。そんなとき、本当に子どもがふたりでよかったなって。とくにシングルマザーになってからは、子どもだけにする瞬間があると、独りぼっちじゃないので寂しくないんじゃないかなって感じています。
── 今、仕事や育児が大変と感じている女性たちになにかアドバイスをされるとしたら、どんな言葉を伝えたいですか。
広田さん:私の場合は10代のときに本当にやりたいことが見つかって、それでお金を稼げるようになりました。しかもシングルマザーになって子どもふたりを抱えながら、好きなことで生活ができているのはラッキーでしかないと思っています。だから私の話がみなさんに当てはまるかはわからないのですが…。これはシングルマザーの方は誰しもが思うことだと思うのですが、47歳になって「仕事ができなくなったらどうしよう」って不安になります。それでもプロレスを辞めないのは、ある種の私のわがままというか。
でも、私は、人生で母親や妻である時期があっても「自分がこんな日々を過ごしたい」っていう気持ちを忘れたくない。子どもは大切ですが、そのなかで自分の幸せのためにやりたいことがあると、きっとどんなことがあっても踏んばれると思うんです。それが子どものためにも繋がっていくというか。だからまずは自分の環境や働ける場所をよりよいものにして、楽しく過ごせるようにすることが、育児をするうえでも大事なのではないかなって思いますね。
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アラフィフにしてますます精力的に活動する広田さん。その勢いは止まりそうもありません。「子どもも大事だけど自分の気持ちも大事」。本当にそのとおり!と感じさせられるインタビューでした。
PROFILE 広田さくらさん
ひろた・さくら。1978年、愛知県出身。NHK名古屋放送局制作『中学生日記』で役者デビュー。1995年GAEA JAPANに入団、1996年武道館興行でプロデビュー。W.W.W.D世界エリザベス王座、Regina di WAVE王座など多数のベルトを獲得。現在はプロレスリングWAVEに所属し、レスラーとして活動。YouTubeチャンネルやSNSなどでも積極的に自身の活動を発信し続けている。4月23日に「シン・広田さくら緊急自主興行サクパラダイスへようこそ〜最後に遊びましょ〜」が開催予定。
取材・文/池守りぜね 写真提供/広田さくら