先輩への失礼発言「重いんだよ、このデブ!」が突破口に

── スランプからの突破口になる出来事はありましたか?

 

広田さん:当時は、新人と先輩との上下関係が厳しくて、それが当たり前の時代でしたが、対戦中に先輩レスラーを担いだときに思わず「重いんだよ、このデブ!」って言っちゃったんです。そうしたら、お客さんがドッと湧いて(笑)。それを見ていた長与さんが「お前は人を驚かせることを目標にやっていけ」とアドバイスしてくださいました。

 

広田さくら
「人を驚かせるレスラーになる」と決意し、アクロバティックなパフォーマンスも

── 長与さんは、広田さんのパフォーマンス力を見抜いていたのですね。

 

広田さん:どうしたら人を喜ばせられるかと考えたときに、自分の方向性がおのずと見えてきた感じです。あるとき、ベテランのデビル雅美選手と試合をすることが決まったんですが、長与さんから「デビルさんのガウンを着て出ちゃえよ」って耳打ちされて。驚きながらも、言われたとおり勝手にデビルさんのガウンを着てリングに出て行ったら、デビルさんがおもしろいリアクションをしてくれたんですよ。それでお客さんもすごく喜んでくれて。それが今のスタイルになったきっかけかもしれません。

 

── 広田さんの特徴であるコスプレや、マイクパフォーマンスというような自己プロデュースに繋がっていったのですね。

 

広田さん:今でこそ「広田といえばマイクパフォーマンス」と言われるようになったのですが、コスプレを300回くらいやったうち、大ウケしたのは3分の1ほど。あとはスベっていましたよ(笑)。それでもやり続けて、試行錯誤しながら自分のスタイルを作り出していった感覚ですね。

 

広田さくら
「レジェンド」と評される里村明衣子さんのド派手なコスチュームをマネた広田さん

── 長与さんといえば、女子プロレス界のカリスマとして人気を博したひとりです。その長与さんの団体に入団したということは、正統派と呼ばれるレスラーへの憧れがあったのでしょうか?

 

広田さん:それはもちろんありました。同じ団体の先輩たちはすごい人たちばかりでしたし。でも、そこを目標にしても、絶対に勝てないっていうのはわかっていて。だから同じスタイルではなく、自分は周りとは違うやり方で頑張らなければいけないっていう思いがずっとありました。