レスラーを卒業も…実力のなさを実感

── 27歳のとき、レスラーを一度卒業されています。

 

広田さん:所属団体の解散に伴って、一度リングから離れました。私の場合は次のステップに行きたいという気持ちがあって。プロレスでお客さんを楽しませることができたのだから、芸能界でも成功できるだろうって完全にうぬぼれていたんです。

 

事務所のコネで『がんばれ!おでんくん』というアニメに声優として出演させてもらったり、事務所主催で私がプロデュース、脚本、演出、主演した単独舞台公演をやらせてもらったり。でも変なプライドが抜けないままだったので、今思えば、端役だと小バカにしたような態度でやっていた気がします。あるとき、マネージャーがプロデューサーに「この子は何でもやるのでお願いします」と話していたんですが、プロデューサーが「何でもできるって、いったい何ができるの」って聞き返していて。その言葉を聞いたときに、いかに自分が無力で無知だったかを思い知らされました。まさに芸能界での挫折を知った瞬間でした。

 

── そこから再びリングに上がるのは、勇気が必要ではなかったですか?

 

広田さん:芸能界の仕事に迷いがあった時期に、またリングに上がってほしいという声があったんです。当時は事務所をクビになっていて、自分は何をしたいのか模索している時期で。2009年に4年ぶりにレスラーとして復帰しました。久しぶりの試合は、本当に気持ちがよかった!不安はあったけれど、リングに上がってみると拍手と歓声とスポットライトを一身に浴びて、充実感が半端なかったです。「私にはやっぱりプロレスしかない」って心から思いました。

 

広田さくら
46歳の今も現役です

── 再びレスラーとして活動することを、周りには報告しましたか?

 

広田さん:復帰するときには、ガイアでお世話になった先輩レスラーに報告しました。アジャ・コングさんは「やりたいことをやったらいいよ」って言ってくださって、その言葉に救われましたね。変に悩んだり、リングから遠かったりしないで、やりたいのならやっていいんだって、自分のなかで自信になりました。

 

 

紆余曲折を経てプロレスの世界に戻り、ここで生きると心を決めた広田さん。結婚・出産した後も引退することなく、双子を育てながら46歳の今も競技を続けています。お子さんたちが小さいころは、毎回試合会場に子ども同伴で通っていたそうです!

 

PROFILE 広田さくらさん

ひろた・さくら。1978年、愛知県出身。NHK名古屋放送局制作『中学生日記』で子役デビュー。1995年GAEA JAPANに入団、1996年武道館興行でプロデビュー。W.W.W.D世界エリザベス王座、Regina di WAVE王座など多数のベルトを獲得。現在はプロレスリングWAVEに所属し、レスラーとして活動。YouTubeチャンネルやSNSなどでも積極的に自身の活動を発信し続けている。4月23日に「シン・広田さくら緊急自主興行サクパラダイスへようこそ〜最後に遊びましょ〜」が開催予定。

 

取材・文/池守りぜね 写真提供/広田さくら