100人中99人が勧める方向よりも自分の信じた道を
── 今後の人生で大切にしたいことはありますか?
與さん:やっぱりずっと自分に正直に生きていきたいです。この世の中、いろんな人がいるし、自分と意見が合わない人もいて、自分がやりたいことについてきてくれなかったり、賛成してくれない人もいると思います。でも、他人よりも自分自身の心に「どうしたい?」って聞くことがいちばん大切だと思っていて。

もちろん、まわりの人たちの声にもありがたく耳を傾けますよ。アドバイスとして。でも、最終的に決めるのは自分ですよね。自分に賛成してくれる人が100人中1人しかいなかったとしても、自分がやりたいことに向かって進んでいくことって、その先の人生のためにも大事だと思うから。100人中99人が賛成する方向へ進んだとしても、あとあと後悔するし、そこでもし失敗したら、まわりの人のせいにしてしまう。人のせいにしている自分も悔しい。僕自身、そんな経験をしました。
だから、最近は自分がいちばんどうすれば幸せになれるのか、生きがいを感じられるのかを考えて選択しています。後悔のない人生を生きるためにも、僕は自分を大切にしたい。自分を大切にできたら、まわりの人にも大切にできるという言葉がありますが、本当にそれは実感しています。自分をまず愛せなければ人は愛せないから。でも、日本では、自分を愛することが不得意な人が多いように思うんです。「自分のことが好きですか?」って聞かれて、「はい」って即答できる日本人って多くないような気がして。僕自身も、何年か前までは「イエス」って自信を持って言えませんでした。
「自分のいいところを10個言ってください」って、アメリカ人と日本人に言ってみたとしたら、アメリカ人のほうがすぐ言える人が多いと思います。日本人はすごく謙遜しますよね。思っていても、相手を気遣って言わなかったり。でもそれは、日本人のよさでもあって。人のことを考えられるし、思いやりがあるからなんですよね。

── そうですよね。
與さん:他人を思いやれるやさしさを持った日本的なよさは忘れたくない。ただ、僕は自分のことを大切にしてから、自分以外の人たちを大切にしたいという気持ちも持ち続けたい。自分勝手な考え方のように聞こえるかもしれないけど、自分の人生って結局、自分で考えていかないといけないから。最終的にどうするのかを決めるのは自分で、責任を取るのも自分。それを忘れないで生きていきたいです。
──「自分の人生に責任を取るのも自分」という考え方、素敵ですね。
與さん:他人のせいにしても、結局、前に進めないですからね。自分の人生ですから!
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カミングアウトを経て、体も心もタフになった與さん。36歳、これからますますパワフルに活躍しそうです。その生き方、考え方に触れ、気づきの多いインタビューとなりました。
PROFILE 與 真司郎さん
あたえ・しんじろう。1988年11月京都府出身。2005年、日本の男女混合パフォーマンスグループ、AAA(トリプル・エー)のメンバーとしてデビュー。2016年から2021年の活動休止までDOME TOURを5回開催。ソロアーティストとしても2019年、初のソロライブアリーナ公演、2021年には全国アリーナツアーを開催。2023年7月に開催したファンミーティングで活動開始を発表。現在、海外を旅しながらアーティスト活動を行っている。2025年4月には、自身初となるフォトエッセイを発売予定。
取材・文/高梨真紀 写真提供/與 真司郎