アメリカンコメディが「ゲッツ」の原点
── なぜ「ダンディ坂野」という名前にしたんですか?
ダンディさん:アメリカンな感じだからです。「ゲッツ」も英語なので。アメリカンショートスタイルが元になっているんですよ。
昔、僕レンタルビデオ屋さんでアルバイトをしたことがあるんですが、そこでお客さんから返却されたビデオを検品するんです。あるときアメリカンコメディが返却されてきたので、それを夜中のお客さんが少ないときに、検品用の小さいモニターで見ていたんです。
最初は「うわ、これは日本人にはわからないだろうな」と思ったんですけど、すごくカッコよくて。それをヒントに、アメリカンコメディのスタイルで、あまり日本人がやっていないものをやりたいなと思うようになって。
あとは、昔の漫才師といえば、大阪では「スーツに蝶ネクタイ」みたいなイメージがありますよね。けど、当時『ボキャブラ天国』(フジテレビ系)が流行っていて、漫才よりコントが多かったので、東京ではスーツに蝶ネクタイでネタをやる人はいなかったんですよ。だからこそ、ピンでアメリカンで、フォーマルな感じで蝶ネクタイをして、ほかとは違う感じにしたくて。

──「ダンディ坂野」を名乗り始めたときはすでに「ゲッツ」をやり始めていたんですか?
ダンディさん:やってました。「ゲッツ」は、もともとは舞台に出るときに「GET WANT!」って叫んでいたのが始まりなんです。人差し指を出すポーズは、アメリカの人が「どうだ、おもしろいだろ?」って指を出す感じを真似しました。ビデオを見たときから「これがアメリカンスタイルなんだ」って思っていたので。
でも僕、緊張しいだし、滑舌も悪いので、他の芸人さんやお客さんから「ゲッツに聞こえる」「ゲッツって何?」って言われるようになったんです。それで、じゃあもう「ゲッツ」にしちゃおうって。
── (笑)。滑舌の悪さからできたネタだったんですね。
ダンディさん:そうですね。あと「ゲッツ」って、響きっていうか、おさまりがいいので。それで気に入って、ずっと使っています。
── ダンディさんが舞台を退場するときに、指を出して腰を曲げるポーズも、アメリカンの流れなんですか?
ダンディさん:あれは子どものころに見た歌番組の生放送が元ですね。歌が終わると次の曲のイントロが流れ始めて、歌手は退場しながら次の人に向かって「どうぞ~」みたいに手を出す感じ。だから、アイドルの歌謡ステージとアメリカンコメディが混ざって、今のスタイルになっているんです。

── 好きなこと突き詰めていった結果、生まれたスタイルなんですね。
ダンディさん:そう、やりたいことをやってるだけなんです。だから20年以上続けても飽きないし、自分で楽しいなと思ってやってます。昔見たもので「こういうのがやりたいな」と思ったことが全部ヒントになっています。