以前は結婚式場で働いていたものまね芸人・坂本冬休みさん。トップの売上を出すも体調を崩して退職を決意すると、さらに4、5年寝たきりに近い生活を過ごした時期があったとか(全3回中の3回)
いじめられてもサラッと返した技とは

── ものまね芸人として活躍されている坂本冬休みさん。人の特徴に気づく人、気づきにくい人がいる中で、坂本さんはいつから人の特徴を掴むのがうまかったと思いますか?
坂本さん:たぶん、幼稚園くらいのときから人の特徴を掴むというか、観察力みたいなものがあったような気がします。口調や仕草など、目に映るものだけではなくて、その人の魅力やマインド、思考がだんだん見えてくるんですよ。相手に興味を持って、相手をリスペクトして、ものまねを通してその場の空気を楽しくするのが子どものころから好きでしたね。
── 小学生のときも明るく元気な子どもだったのでしょうか。
坂本さん:クラスでもにぎやかで元気なタイプだったと思います。でも、目立ったぶん、嫌われる人には嫌われました。男の子には泥を投げられたり、カバンに石を詰められたり、上履きに画びょうを入れられたり。要はイジメですよね。理由はなく、ただ気に食わなかっただけなのかもしれません。でも私は私で、技で返しましたね。
── 技とは?
坂本さん:意地悪をしてきた相手を逆手にとって、変な顔をして返すとか。または、相手のものまねをして笑いで返すんです。暴力的な返しは絶対にしなかったけど、自分ができることで自分を守りました。
自分だけでなく、クラスに馴染めない子がいると、やっぱり気になって。その子が花の髪飾りをつけていたら、私も同じものを一緒につけて学校に行くんです。「あなたはひとりじゃないよ」って伝えたかったし、一緒の格好をすることでみんなの注目を集めたら、その子も会話に入れるし、みんなと盛り上がれるかなと思ったんですよね。
── その後、中学、高校を卒業すると進学はせず、居酒屋やパブ、遊園地のレストランでアルバイト生活をして過ごした後、結婚式場の契約社員として働くことに。
坂本さん:結婚式場を選んだ理由は2つ。当時は地元の千葉に住んでいたのですが、東京に出て働いてみたかったのが1つ。2つ目の理由は、遊園地で働いたことで人の笑顔がたくさん見られたので、自分も人を笑顔にする仕事がしたいと思ったからです。そこで浮かんだのが結婚式場でした。結婚式場では、はじめは配膳や結婚式のプランナーをしながら、途中から結婚式の司会もすることに。私を教育してくださった先輩が、プランナーとしてトップの売り上げを出していたので、私も見よう見まねで先輩の仕事を覚えながら、気づいたら自分も売上トップになっていましたね。
── ここでも人を観察する力が働いたと。
坂本さん:いかせたと思います。ただ、結婚式場では7年くらい働きましたが、途中で頑張りすぎて、体調を崩してしまったんです。朝から晩までギッシリ働いて、結婚式を何件も成約させましたが、固定給だったので給料は変わらない。たとえば、コンパニオンだったらバイト代プラス指名料が入るとか思いますが、そうしたこともなくひたすら業務に追われる日々でストレスが溜まってしまったんですよね。仕事自体は好きでしたが、やっぱり労働と対価が見合っていないような気がして、「退職したい」と思いきって会社に伝えました。しかし、会社の返事は「変わりはいるからいいよ」って。