「どこでもまずトイレの確認」の人工肛門生活

── 人工肛門患者(オストメイト)用のトイレも増えていますが、まだまだ理解が進んでいない印象です。生活の面で大変なことはありましたか。

 

中井さん:人工肛門という名前から、「何か機械を体につけているんじゃないか」と思う方が多いのですが、腸からの排泄物を出す出口を新たに作って、それを受け止める袋を体につけています。お腹に装具を貼ってそこに袋をセットするのですが、排泄物が溜まったら捨てたり、袋自体を交換したりする必要があります。24時間365日つけていると皮膚がかぶれてしまって、剥がれやすくもなります。汗をかく夏は特に大変でした。便意の感覚がわからないので、お腹が緩いときはすぐにいっぱいになってしまいますし、臭いの問題もあります。この1年間はどこに行ってもまず初めにトイレの位置を確認するのが習慣になっていました。とにかくトイレに時間がかかっていました。

 

中井美穂さん
観劇に訪れた際の中井美穂さん

── 生放送の番組出演はさらに大変そうですね。

 

中井さん:いろいろなことに気を使っていました。ピッタリした洋服は着られませんし、万が一、漏れたことを考えて濃い色の洋服を選んでいました。オストメイト用の下着もあるので、上から腹巻やペチコートのようなものをつけて、アウターに響かないような工夫もしていました。当時は世間に公表はしていなかったのですが、番組でお世話になる方には、「どういう病状で、本番中に席を立たなきゃならない可能性もある」ということは伝えていました。海外出張の際は主治医に英語で、手術の経過や現在の症状を英語で説明する文書を作ってもらい、現地でもし何かあったときにはそれを見せるような準備もしていました。

 

── 世間の多くの方は症状を知らない状況だったかと思いますが、仕事との両立はいかがでしたか。

 

中井さん:仕事があるというのは私にとって、とてもありがたかったです。家にずっと閉じこもっていたら気持ち的に落ち込んでいたかもしれませんが、通常通りとまではいかなくても、仕事もなるべく支障なくできるようにしたことで生活に張りがありました。その間はレギュラーのものをきちんと取り組んで、時間的にも余裕の持ったスケジュールを組み、無理をしないよう心がけました。

 

公表してしまうと、そこにばかり興味を持たれてしまうとか、腫れ物に触るみたいにされたら困るなという気持ちもありました。それに、私の場合は1年後にまた腸を繋ぎ直す手術をすることが決まっていたので、言う必要はないと思っていました。今後ずっと人工肛門になるとなれば、もしかしたらそのときに公表したかもしれません。