ひとりじゃ何もできない無力感を感じた

── 退院後はどのように生活していたのでしょうか?

 

中村さん:私は2006年に結婚したゲイの夫がいるのですが、夫がつきっきりで介護をしてくれました。トイレに行くときやお風呂に入るとき、何かを取らなきゃいけないとき、どこかに行くときなど、夫が車いすを押して連れて行ってくれる、そんな状態でした。

 

治療で服用したステロイドの副作用で、ムーンフェイス(顔が腫れる)になった

── 旦那さんが介護をされていたんですね。

 

中村さん:トイレに行きたくなると、夫に頼んで車いすを押してもらい、抱きかかえて便座に座らせてもらっていました。そんなことを毎日繰り返していたので、夫はほぼ24時間、私のそばにいてくれました。夫は疲れてソファで寝てしまうこともあったんですが、夫が寝ているときに限ってトイレに行きたくなるんですよね。申し訳ないと思いながらも、起こして連れて行ってもらうしかない。夫に迷惑をかけていると感じることと、ひとりで何もできない無力感が本当につらかったです。

 

足がまっすぐに伸びなかったので、矯正器具をつける

── 介護をする側も大変ですが、される側もつらいですよね。

 

中村さん:私は20代、30代、40代と、自立してひとりで生きていくことを人生の最大の課題としてきました。経済的な自立はもちろん、精神的にも人に頼らず、自分のことは自分でやれるという強い思いがあって。それを誇りに、ひとりで生きていけるように頑張ってきたんです。でも、どれだけ自立心があっても、体が不自由になると何もできなくなるじゃないですか。人の手を借りなければトイレにも行けないし、お風呂にも入れない。