ネガティブをポジティブに変えれば子どもの魅力に気づける

西村佑美
2020年6月、ユーチューバーとしてデビュー!(「ママ友ドクターchannel」より)

── SNSでの発信や講演、オンラインコミュニティを通して伝えたいことは何でしょうか?

 

西村さん:発達特性を持つ子どもの母としての経験を皆さんに伝えたいんです。言葉が遅く、多動だった息子は、想定の10倍、いや30倍は成長しています。ひとりで塾に通って受験勉強をするまでになるなんて、思ってもいない未来でした。だから、どんなお母さんも子どもの成長を諦めないでほしいですし、自分の経験が、いま苦しんでいるママたちを救えるかもしれない、放っておけない、といった気持ちがあります。

 

── お話をお伺いしていると、親が子の特性をポジティブに伸ばし、個性としてとらえることが重要だと感じました。

 

西村さん:そうです。私自身も時間をかけてポジティブな変換ができるようになったのですが、親のマインドが変わると子どもの長所や魅力に気がつけるようになります。“いい子像”が「普通であること」のままだと、子どもの魅力に気がつけない。性格ではなく行動に注目することが大切です。

 

私としては、ネガティブに見える面をポジティブに言い換える「ペアレントトレーニング」や、「アイコンタクト」といった“非言語的コミュニケーション”を重視した介入方法をおすすめしています。医学的に研究され、エビデンスのある子どもへのアプローチを知ってもらいたいです。実際にこうした方法を実践した相談者のママたちからも「子どものいいところを見つけられるようになりました」「子育てが少しラクになりました」といった声をいただいています。

 

── 今後はどんな活動を進めていきたいですか?

 

西村さん:オンラインコミュニティとして続けてきた「子ども発達相談アカデミー VARY」には、全国のべ200名近いママたちが在籍し、発達支援について学んでくれています。たとえばこのママたちが今までの学びを生かし、次の世代のママたちの相談に乗る「ママメンター」として活躍していってほしいと思っています。そのために一般社団法人を立ち上げましたので、これからは個人ではなく法人として全国的な子育てプラットフォームをつくっていきたいです。

 

西村由美と家族
3人の子どもたちと

 

PROFILE 西村佑美さん

にしむら・ゆみ。1982年宮城県仙台市生まれ。三児の母。最重度自閉症のきょうだい児として育つ。2011年から小児科医として大学病院などに勤務し、発達専門外来を新設するなどしてのべ1万組以上の親子を診察してきた。自身の子にも発達特性があり、医師と言う立場で育児の悩みに寄り添うことに限界を感じ、2020年「ママ友ドクター®」プロジェクトを始動。2024年、一般社団法人 日本小児発達子育て支援協会を設立した。著書に『発達特性に悩んだらはじめに読む本』(Gakken)がある。

 

取材・文/富田夏子 写真提供/西村佑美