言葉の遅れや多動といった発達に特性のある長男を育てた経験を活かし、同じ境遇の親御さんに寄り添う「ママ友ドクター」として活動を広げる小児科医・西村佑美さん。活動原点となったのは、余命宣告を受けた患者さんから言われた、ある言葉でした── 。(全2回中の2回)
息子の発達の違和感「思っていた子育てと違う」

── 西村さんは小6男子、小3女子、年中男子と3児の子育てをされています。ご長男にADHDの傾向があり、発達に特性が見られたそうですね。
西村さん:はい。現在、小学6年生の長男は、言葉の遅れや多動がありました。集団の中では、同じ年齢の子と比べて会話力の発達が1年くらい遅いような状況でした。でも、成長するにつれ発達の特性が目立たなくなり個性として活きるようになってきて、中学受験に向けて自分で塾通いをするほどになりました。
── いつごろ気がついたのですか?
西村さん:1歳半検診のころです。特に言葉の遅さが目立ちました。また、とにかく動き回る子どもだったので私は常に追いかけていました。自分も小児科医なので言葉の遅れは気になりましたが、わが子となると冷静には考えられませんでした。2歳半くらいまでは「普通」にこだわり、発達特性はないだろう、と思い込もうとしていました。でも、それは私のこだわりであって、そんなことより息子が不自由なく成長していくことが大事なんだと気がつき、いったん発達に特性があることを受け入れよう、と決めました。
── お子さんが、発達特性がある(神経発達症)かもしれない、と気づいたときのお気持ちを聞かせてください。
西村さん:やはりショックはありました。子育てに対する憧れというか、歩けるようになったらお友達と公園へ行ったりお出かけして…というイメージがあったのですが、そんな状況ではなかった。とにかく走り回るし、偏食なので外食もできないし、お友達と公園なんてとんでもない。「私が思っていた子育てとは違う」というもどかしさがありました。
── 1年ほど時間をかけながらお子さんの特性を受け入れていったんですね。
西村さん:厳密に言うと、必ずしも受け入れるべきとは思っていないんです。診断をつけるより今できることをやろう、という気持ちの方が大きかったんです。うちの子はADHDの傾向があるけれど、これは必ず自分の強みになるはずだ。絶対に今は苦手なところも遅れているところもポジティブに変えて、私たち親子を気の毒そうに見てくる人たちを見返してやるんだ!という負けん気が「受け入れる」という気持ちより大きかったのかもしれません。
わが子がいわゆる普通ではないとか、発達特性があるということを「拒否」「否定」をするのはだめだけど、「受け入れて納得する」かどうかはどちらでもいい。ありのままをただ見つめて、次のステップへ進める状態になればいいんです。ありのままを見ていれば、子どものちょっとした変化に気づけて、成長を感じる部分があればうれしくなり、違う視点が生まれていきます。