自販機のみで発売した商品が、わずか1年半あまりで累計30万個を超える大ヒット。中身は生クリームだけの「なまくり」缶が話題です。仕掛け人はニート生活からはい上がった20代の若者。いったいどうやってそんなアイデアが生み出されたのでしょう?(全2回中の2回)
ホリエモンから言われた「ググれ、カス」がきっかけ
自販機に連日大行列。信じがたい光景が広がるのが、東京・渋谷にあるファッションビルSHIBUYA109の地下2階に置かれたとある自販機です。何を売っているのかと思えば、生クリーム!なんで生クリーム?その仕掛け人は元ニートの青年でした。

「僕は子どものころから甘いもののなかでも生クリームが大好きでした。でも、生クリームだけを手軽に味わえるスイーツは世に存在しない。好きが高じてそれを自分で作って生クリーム好きのために提供しようと考えたのが出発点です」
こう話すのは、9割が特製生クリームでできた驚きのスイーツ缶「なまくり」を考案者した井上拓海さん。しかし、当時は友人の家に寝泊まりするニート生活を送っていたといいます。そんな状況でアイデアを実現するのは難しそうですが…。
「みんなそう思うでしょうが、頭を使えばそんなに難しいことではないですよ。僕は元料理人で、働いていたお店を辞めた後に堀江貴文さん主催のオンラインサロンに入会しました。堀江さんがよくつぶやいていたのが、『ググれ、カス』という言葉。要するに、ネットを使って自分で調べることを意味しています。ネットリサーチが習慣化した影響と、もともと物事を煮詰めて考えるタイプだったのが強みになり、道が開けていった感じです」

井上さんは2021年当時、SNSで話題になっていたショートケーキやティラミスを詰め込んだスイーツ缶を発見します。早速ネットで調べると、北海道のパフェ屋がテイクアウト用に提供しているものでした。
「この商品をヒントに、生クリームだけを缶に詰めることを思いつきました。缶には相応のコストがかかり、値段設定を高くしないと儲かりません。ショートケーキなどを詰める場合は店舗で買うのと変わらず、購入動機としてやや弱くなってしまいます。その点、生クリームに特化すれば目を引き、店舗との差別化になるので強いだろうと」