「金もない時間もない」と、行き詰まった先にメンタルまでやられてしまうことはありますが、逆に発奮したり、解放されてうまくいくことも。後者の人生を歩むのは、人気ベーカリーを経て起業までした、元ニート料理人の若者・井上拓海さんです。 (全2回中の1回)

料理人を4年で断念「ニートになって思ったこと」

生クリームがぎっしり入った缶詰『なまくり』をご存じですか?自動販売機で購入できる新感覚のスイーツ缶です。2022年4月の発売から1年待たずに10万缶を売り上げ、現在累計販売数30万缶を突破。生クリーム好きを虜にして大ヒットしています。

 

井上拓海
話題のベーカリー「小麦の奴隷」オープン初日の1枚

この『なまくり』の考案者は井上拓海さん、28歳。『ヒルナンデス!』『ZIP!』『ラヴィット!』などテレビの情報番組の取材をはじめ、SNSでも話題を呼び、一躍時の人となった井上さんですが、以前は悩み多き若者のひとり。「職場になじめず、生きづらさを感じてニート生活を送るなど、悶々とする日々を過ごしていました」と、当時の心境を語ります。

 

「地元の高校で調理を学び、卒業後、上京して飲食の道に進みました。ホテルのレストランに2年、その後、イタリア料理店に転職して2年、計4年間働きました。どちらも長時間労働を強いられる職場で、集中力が30分程度しか持たない自分に合わず、怒られてばかりでした。ほめられた記憶はなく、壊滅的に仕事ができないポンコツでしたね(笑)」

 

このままではダメだと感じた井上さんは退職を決意。しかし、求職活動はせず、ニートになることにしたそうです。なぜでしょうか?

 

井上拓海
新卒で都内ホテルに入社し、レストランのオープニングスタッフに

「とにかく、環境を変えたかったんです。成長した自分に生まれ変わるために、生活や生き方を見直そうと。このとき、テレビや冷蔵庫など私物をすべて処分し、住まいも引き払って友だちの家に転がり込みました。あえて身軽になり、ゼロからリスタートしたわけです。いま振り返ると、僕にとってニートの日々は必要不可欠な準備期間だったと思いますね」