見返り以上の温かい気持ちをもらえる

── 3人いらっしゃるご自身のお子さんたちの状況はいかがですか?
若林さん:シングルマザーになってから10年が経ち、子どもたちはいま、長男25歳、次男15歳、長女13歳になります。生活するのに必死だった離婚後、子どもたちは私に寂しい様子を見せなかったのですが、当時5歳だった次男にこの間ふとそのころの記憶を聞いてみたら「覚えてる。お父さんがいつ帰ってくるんだろうと思って、廊下でずっと待っていたから」と言われたんです。
元夫は、旅行に行くかのように「じゃあ」と出て行ったので、ずっと帰ってくると思って待っていたんですね。長男も寂しい顔は見せなかったけれど、父親との思い出がいちばん多かったからつらかっただろうと思います。そんななかでもアルバイトで家計を助けてくれましたし、弟や妹のお世話もよくしてくれました。3人とも元気で明るく過ごしているいまの笑顔を見ると、いろいろと大変なことはあったけど何とかみんなでがんばってきてよかった、という気持ちになります。
── 今後はどんな活動をしていきたいですか?
若林さん:今支援している世帯に、支援を卒業してもらうようサポートすることです。支援を続けていると、支援をされる側が「もらって当然」という感覚になってしまうことがあります。それではいつまでも人に頼ることしかできないので、自立に向けて頑張ってもらえるようにしていきたいです。実際、支援を卒業された方から今度は「今までの恩を返したいからボランティアとして使ってください」「今度は物資を提供させてください」と言われることがよくあります。私自身が周囲からもらった優しさを返そうと思ったように、支援を受け続けるのではなく支援する側に回れるようになってほしいという願いがあります。
── 支援の輪が広がっているんですね。
若林さん:損得を求めず、無償で支援を続けているのがよいのかもしれません。損得勘定で動く場合、見返りを求めますよね。でも損得を気にしなければ、見返り以上の何か温かい気持ちをもらえるんです。だから、温かさに囲まれている今は、自分がすごく良い環境にいるな、人に恵まれているな、と感じます。神さまがくれたご褒美時間のようです。
PROFILE 若林優子さん
わかばやし・ゆうこ。1979年大分県生まれ。1999年に結婚し、働きながら3人の子どもを育てる。2013年からレストランの経営を始め、その後離婚。当時に受けた周囲の優しさを今度は自分が返したいと、2017年NPO法人「子育て応援レストラン」を設立。こども食堂の活動から開始し、協力企業が増えた現在では年間4,000世帯にお弁当や食材、日用品などを支援している。
取材・文/富田夏子 写真提供/若林優子