黄色のアイテムは「配慮が必要なサイン」

さまざまな事情を抱えた犬と距離をとってほしいことを周囲に知らせるYELLOW DOG PROJECT(イエロードッグプロジェクト)という活動があります。2012年にスウェーデンで始まり欧米諸国を中心に広まっている啓発活動で、日本では2021年から(株)REGOLITHがペット関連事業としてYELLOW DOG PROJECT JAPANをスタートさせました。プロジェクトリーダーをつとめる多胡亜美さんは、配慮を必要としている犬や飼い主がいることを知ってほしいと話します。

 

「高齢の犬や、リハビリやトレーニング中など健康上の問題、過去のトラウマや恐怖心が強い犬が問題を克服するために、黄色いリボンや黄色いものを身につけてもらい、周囲に適切な距離が必要なことを知らせています。それは決して犬が攻撃的、危険であるという意味ではなく、犬や飼い主が注意や配慮を必要としているサインです。黄色いものを身につけている犬を見かけたら、犬と飼い主だけが知っている適切な距離を保つため、邪魔にならないよう移動の時間を与えてあげてください。許可なく近づいたり交流したりすることを控えることも重要です」

 

有村さんは、イリスをきっかけにプロジェクトの存在を知り、散歩の際は黄色のタグをつけて周囲に知らせているといいます。

 

「日本ではまだまだ知られていない活動なので、もっと広まってほしいなと思います。ワンちゃんしか見ておらず、触りたくて来る方もいらっしゃいますが、タグを見てハッと気づいてくださる方もいます。タグは、周囲の方に知らせるという意味で役に立っています。

 

有村実樹さんの愛犬
お散歩中に黄色のタグをつけているイリス

イリスと生活していて、頑張っている姿や成長を見られると嬉しいです。噛むことも、これまで生きてきた人生の結果なのですが、この子がこんなに成長しているんだから、自分も成長し続けなくてはと思いますね。それに、飼い主に対する思いも強いです。お散歩中に話しかけられることも多いのですが、周りには一切愛想を振り向かず、私のことしか見ていない、ものすごく一途なんです(笑)。それがたまらなく可愛いです」

 

YELLOW DOG PROJECT JAPANのプロジェクトリーダー、多胡さんは、犬と人間が共生して社会で暮らしていくために必要なことについてこう話します。

 

「まずは飼い主が愛情を持って愛犬とのコミュニケーションを大切にし、適切な環境を整えること。定期的な健康管理や適切な食事を行い、基本的なしつけをして良い行動を促すこと。他の動物や人との触れ合いを通じて社会化を進め、ペットの一生を通じて責任を持って面倒を見ることが重要だと思います。犬が突然、攻撃性を示す場合は医学的な問題がないか獣医師に相談し、一時的に黄色いリボンや黄色いものを身につけて様子を見るのもいいと思います。人との共生のために、犬を飼っている方だけではなく、飼っていない方にも配慮が必要な犬と飼い主がいるということを知っていただき、広く根付いていったらいいなと思っています」

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/有村実樹、YELLOW DOG PROJECT JAPAN