今や15歳未満の子どもの数よりペットの数が多い時代となりました。街で見かける散歩中の犬につい触りたくなる何気ない行動にも、実は配慮が必要な場合があります。繁殖引退犬を飼っているモデルで美容家の有村実樹さんは、愛犬について「これまで外に出たことがなかったことによる恐怖心が強い」と常に周囲に気を配ってお散歩をしているそうです。お話を伺いました。
お散歩は「前後左右に人がいないか確認」
繁殖犬とは、人気の犬種などをペットショップや個人に販売する目的で子犬を繁殖しているブリーダーのもとで飼われている犬のことを指します。その飼育環境はさまざまで、頻繁に体の手入れを行い、散歩に連れて行ってもらえる犬もいれば、ケージの中だけで過ごしている犬もいるといいます。モデルで美容家の有村実樹さんは、メスのシーリハム・テリアのイリス(12)を飼っています。今から7年前に迎え入れた繁殖引退犬で、とても臆病な性格だと言います。
「イリスの場合は繁殖を引退するまで外に出たことがなく、最初は外の光や音、ちょっとした段差にも怯えていました。毛も汚れていたからだと思いますが、引き取った当初は丸刈りでした。お散歩は、10分くらいで歩ける距離を40分くらいかけて歩く練習から始めました。ドッグトレーナーさんに相談しながらトレーニングを行い、だんだんと噛もうとする反応のセンサーがやわらいできたのですが、それでも恐怖心とテリアの気質もあって、びっくりすると噛んでしまうことがあります。目の前に人の手が突然、パッと見えると驚いてしまうので、家ではイリスの目の前に何かが落ちてもすぐには拾わないようにしています。トレーナーさんからは、イリスの場合、これまで外に出ていなかったことによる未知のものへの恐怖心と、テリアの気質が合わさって難しさが増していると言われているのですが、そこも受け入れて生活しています」
有村さんは、イリスを迎え入れてから反省したことがあったといいます。
「先代のダイアンも繁殖引退犬で、本当に穏やかな子でした。ダイアンのブリーダーさんは、お散歩にも連れていってくれていたので、外に出るのもスムーズでした。イリスを迎え入れるときも、同じ繁殖引退犬だからきっと穏やかだろうと思っていた自分がすごく恥ずかしくなったんです。イリスは、これまでケージの中の世界しか知らない子でした。それに、人間だってひとりひとり違うように犬にも個性があります。イリスは、私に新しい教科書をくれました。いろんな価値観があって、いろんな出来事があるということを教えてくれて、毎日勉強になっています。悩まないと見えてこないことってありますね」
有村さんは、特に外で散歩をする際は細心の注意を払っているそうです。
「家族で協力して、イリスが街で過ごす時の人との距離感はとても気をつけています。常に前後左右に人がいないか確認しながら紐を短く持って歩きます。夫が私とイリスの後ろについて、私が気づいていないときに声をかけてもらうようにしています。
それでもやっぱり見た目が特徴的なこともあって、信号待ちなどのふとしたときに、イリスに触れようと、すっと手が伸びてくることがあります。そのときはパッと紐を引っ張って『ごめんなさい、危ないです』とお声がけしています。特に小さいお子さんは走ってきていきなり触ろうとすることが多いので注意しています。距離が近いときはイリスを私の方に引っ込めるようにしているのですが、なぜそこまでして犬を離すのかわからない方も多いなと感じています」