夫婦間で認識のズレがあるのは危険だと思って

── 夫婦間で気をつけていることはありますか?

 

田村さん:今はとにかくすり合わせを大事にしています。これは結構、意識していることです。たとえば、ぼくが洗い物をしたとします。自分としては「完璧にやった!自分ができることはやったぞ」と思っていても、奥さんにとってはあまり助かっていないことがあったんです。

 

── どういうことでしょうか。

 

田村さん:そのタイミングで洗い物をするんだったら、子どもたち全員をお風呂に入れてくれていたほうが助かるという場合です。洗い物は後から食洗器を使えばいいから、歯磨きをさせて髪を乾かし、寝る準備をするほうが先だったんです。さらに、水筒のゴムパッキンの部分を洗い忘れていて、もう一度奥さんが洗い直さないといけなかったり。これって「自分では頑張ってやった」と思っているのに、相手からしたら「ありがたいけど、むしろやらなくていいよ」ということですよね。

 

田村裕
いまではどんな料理もお手のもの

── たしかにそうですね。

 

田村:そういうズレを感じたときに、これは危険だと思ったんです。ある日突然、大ゲンカなるなと。自分は頑張っているのに、奥さんに「それはいらなかった」と言われたら、こんなに悲しいことはないですよね。「おれだってこんなに頑張っているのに」ってなると思うんです。だから、家事や育児は常に奥さんと、今やってほしいことをお互い確認し合いながらすすめています。今までやってこなかったぶん、わからないことも多いので「これでよかった?」って都度聞いて、家事や育児のズレをできるだけなくすようにしています。

 

── 大阪に拠点を移したことで、ご家族との時間が増えて結果的によかったですね。

 

田村さん:そうですね。東京で忙しく働いていたときも、子どもとの時間は欲しいと思っていましたし、仕事をセーブしようかと迷った時期もありました。お金よりも、やっぱり家族といたいという気持ちが強かったんです。奥さんとコミュニケーションをとる時間も欲しかったし、子どもたちとももっと一緒にいたいという気持ちは常にありました。

 

── 大阪でのご家族との暮らしはどうですか?

 

田村さん:仕事がなくなって、大阪に戻ってきて最初は暇をしていたんですけど。そうこうしているうちに、大阪で仕事が少しずつ増え始めて。今は大金持ちじゃないですけど、何とか生活が回るくらいにはなってきました。もっと稼いで、子どもが私立の学校に行きたいって言ったら「よし、行ってこい」って言えるくらい稼ぎたいなと思います。でも、その反面、家族と過ごす時間が少なくなるのは嫌だなとも思っています。

 

── バランスをとるのが難しいですよね。

 

田村さん:ほどよく仕事をいただいて、ほどよく家族と過ごせるのがいちばんいいなと思ってます。そのためには、川島くんとやる仕事を増やしていくのがいちばんいいのかな。ぼくの場合、基本的に仕事はロケが多くて拘束時間が長いんです。川島くんはMCなんでね。川島くんと一緒にいれば、今より少ない拘束時間で稼げそうですよね。だから、川島くんにもうちょっと歩み寄りたいなって、今思ってます。近づきたいですね、あの人に(笑)。

 

PROFILE 田村裕さん

たむら・ひろし。お笑いコンビ・麒麟のツッコミ担当。舞台やテレビで活躍する一方で、近年はバスケ芸人としても活動の場を広げる。2007年に発売された『ホームレス中学生』(ワニブックス)は、発行部数225万部を突破するベストセラーになる。

 

取材・文/大夏えい 写真提供/田村裕