中学時代に家庭崩壊も兄がくれた言葉が
── どのような想いが、田村さんをそこまでバスケに向かわせたのでしょうか。
田村さん：バスケに貢献したいっていう気持ちです。中学生のころ、僕の家は貧しくて家庭が崩壊しました。当時はお金がないから、バスケも高校進学も辞めて働こうとしていたんです。そんなときに僕の兄が「家のことはおれが何とかするから、高校には進学しろ。バスケも続けろ」と言ってくれました。家庭環境は複雑でしたが、バスケをしているときは不思議な安心感がありました。兄のおかげで高校に行けたし、バスケも続けられた。バスケのおかげで、仕事がなくてつらい時期も乗り越えられました。兄に恩返しがしたいという気持ちと、つらいときにいつも心の支えになってくれたバスケの役に立ちたい、という想いがありました。
── 大変なときにお兄さんに支えられていたんですね。
田村さん：中学のバスケ部のキャプテン、高校のバスケ部の顧問の先生にも本当にお世話になりました。バスケの世界には、ぼくにとって恩師と言える人が何人もいるんです。バスケの楽しさを多くの方に知ってもらうことで、バスケにもその方たちにも恩返しがしたいという気持ちが強かったです。
── バスケと心中をする覚悟を決めた後は、どうされたのでしょうか。
田村さん：当時、バスケは地上波で中継されていなかったんです。でも試合を見たら絶対にハマる。こんなにおもしろいスポーツなんだから、見てさえくれれば絶対盛り上がるはず。まずはバスケの情報をみんなに届けたい！と思い、SNSで発信を始めました。友達を試合観戦に誘ってみたりもして。とにかく見ればハマるからって。身近な活動から始めていきました。
── 今やバスケ芸人としても活躍されていて、バスケも大人気スポーツですね。
田村さん：バスケはもう大躍進をして、今は人気のスポーツになっていますよね。昔は、バスケの日本代表選手はみんな友達、みたいな時期があったんですよね。連絡をとろう思ったらみんなととれるっていう、そんな時代もありました。でも今は世代も変わって、会ったこともない選手ばかりになりましたね。それで僕もいちファンに戻ったというか。あえて選手に近づくことはしないで、日本中のバスケファンと同じ距離で応援できたらいいなと思っています。
PROFILE 田村裕さん
たむら・ひろし。お笑いコンビ・麒麟のツッコミ担当。舞台やテレビで活躍する一方で、
取材・文／大夏えい 写真提供／田村裕
