息子の反抗期は「トランポリンと自転車で解決」
── 息子さんは今、カナダに留学しているそうですね。
玉城さん:高校卒業後に現地の大学に行ったのですが、わが子ながらよく頑張ったなと。本当にすごいなと思います。小学生のころに一度、短期留学の経験があるのですが、ひどいホームシックになって、帰国してからは「2度と海外には行かない、もう沖縄から出ないぞ」というくらいの勢いだったんです。それが突然、高校2年生のときに「留学をしたい」と言い出して。諦めると思っていたのですが本気で勉強も頑張って、大学に合格して通っています。私としては、いつ帰ってきてもいいと思っているんですけど、本人はとても楽しんでいるようです。

── ちょうど思春期にあたる時期に受験をされていたと思いますが、反抗期はありましたか。
玉城さん:少しありました。息子は、「俺、今反抗期だから」って自分で言うタイプで。「自分で言うか〜」と思うんですけど、コロナ禍のときに一緒に過ごす時間が多くて、どうやって長男と向き合おうか悩みました。反抗期のモヤモヤをどう思いっきり発散させるか考えた結果、運動することに行き着いたんです。
── 運動で発散、健全ですね!
玉城さん:最初はマンションに住んでいたんですけど、実家の近くに引っ越して、庭に大きめのトランポリン置いて、思いっきり飛んでもらうことにしました。バスケットボールのリングも置きましたよ。近くの海でシュノーケリングにもよく連れていきました。子どもがイライラしたら、運動をさせるのは結構おすすめです(笑)。それと、そのときは自転車でどこまでも行っていましたね。息子は勉強に行き詰まったら外に出て、だんだんと勉強と運動のルーティンができていました。「受験もコロナ禍のつらさも、運動で発散できた」と言っていました。
── お子さんたちはそれぞれ大学生、高校生、中学生で、だんだんと将来についても考える時期になりますよね。お子さんたちの未来に願うことは何ですか。
玉城さん:3番目の娘が今年、受験を控えているのですが、どんな結果であろうと後悔しないように応援するよと伝えています。でもやっぱり心配だからガミガミ言ってしまうんですけどね。『未来へ』を歌うときにいつも、皆さんの未来が明るくありますようにと、願いを込めているんですけど。そうは言っても今後っていつどうなるかわからないし、あまりに先の話をすると不安になってしまいますよね。だから、遠い先のことよりも、今を精一杯生きてほしいということに行きつきました。長男が離れて暮らしていますけど、今は家族それぞれができる限りのことをするタイミングだと思っています。
子どもたちの大切な時期はなるべく仕事も控えているんですが、それは私も子育てで後悔したくないからなんです。「あのとき、やっとけばよかった」とあとから思いたくない。不器用な私ですが、子どもが何かに悩んでいることに気づいたときは、すぐに寄り添うようにしています。1日1日、「今日はこれだけできた」と自分を褒めてあげて、今を生きていくことが、明日へ、そして未来へ繋がっていくんだと思います。
PROFILE 玉城千春さん
たましろ・ちはる。沖縄県読谷村出身。1995年Kiroroを結成。ボーカル、作詞作曲を担当。1998年1月に『長い間』でメジャーデビュー。以降『未来へ』『Best Friend』など誰もが口ずさめるヒット曲多数。2021年、10年ぶりとなるソロ活動をスタートし、『命の樹』『Hope Dream Future』『あの人の声』を配信リリース。その他、沖縄県内の小中学校で夢や命の尊さを歌と共に子どもたちに届ける特別授業や、岡本知高、島袋優(BEGIN)への楽曲提供、ビビアン・スーのオリジナル曲、日本語詞を担当するなど、作家としても活動の幅を広げている。
取材・文/内橋明日香 写真提供/玉城千春