「兄は幸せだった」と言い聞かせる自分がいた
── お兄さんの生と死について、鈴木さんはどのように折り合いをつけたのでしょうか?
鈴木さん:すごく混乱はしましたが、別の角度から眺めている自分がいたこともよく覚えています。別の角度からの自分は、混乱する自分に一生懸命こう言い聞かせていました。「お兄ちゃんは、いち抜けしたんだ。こんな苦しい世界で、ずっと冷たい視線や言葉をかけられて生きるより、先にいち抜けできて、幸せだったんだ」って。
── つらい経験を乗り越えるために、ご自身で考え抜いたのですね。鈴木さんは、逆境や困難にもふりまわされにくいタイプなのでしょうか?
鈴木さん:そんなことはありません。だいぶ、ふりまわされていますよ(笑)。むしろ、年齢を重ねたいま、責任が重くなったので、できれば逆境や困難は来ないで、と思ってるくらいです。大変だから(笑)。
ただ、感情の起伏は昔から少ないほうで、わりとフラットですね。若いころはもっとフラットで、どうしてなのかはわかりません。「自分も、もっと感情丸出しで生きてみてもいいのかも?」と、感情的な人に引きずられて、時々考えることもありますが、はたから見ると本人はけっこうしんどそうだし、まわりの迷惑になるケースも多々あります。やっぱり、感情丸出しでないほうが自分はいいや、ってところに着地します(笑)。
逆境や困難は嫌だと言いましたが、それらを乗り越えた先には明るいものが待っており、自分も本当に成長できます。これは、実感しており、わかっています。でも…できればいつも、のほほんと生きていたいです。
PROFILE 鈴木蘭々さん
すずき・らんらん。1989年、資生堂CMでデビュー。1994年に『ポンキッキーズ』で安室奈美恵とのユニット「シスターラビッツ」でブレーク。歌手、モデルなど幅広く活躍し、2年連続CM女王に輝く。2013年に化粧品会社WOORELLを起業。2023年に、芸能生活35周年記念のベスト盤『鈴木蘭々 All Time Best~Yesterday&Today~』をリリース。
取材・文/岡本聡子 写真提供/鈴木蘭々、WOORELL 株式会社