父の教えは「どんな規模でもいいからトップになれ」

── 決断の速さに驚きです。まったくの異業種ですが、不安はなかったですか?

 

植草さん:経営者として先を読む目を養うよう親に教育されてきたので、サバイバルがもう身についちゃっているんですよね。私の両親はともに経営者。生まれたときから「鯛の尾より鰯の頭になれ」と言われ、ライオンの教育のように叩き込まれてきました。たとえば、泳ぎを覚えるときもそう。父は子どもたちをボーンと海に投げるから、私たちは溺れないように必死になって泳ぐ。6、7歳のときです。そういう教育でした。私は4人きょうだいですけど、みんな経営者になりました。姉はクラシックバレエの先生で教室を3つ持っていて、兄は建築業で弟は開業医と、みんな全然ジャンルは違う。それぞれの特性を生かした仕事に就いています。

 

父は口だけではなく、こういう事業がやりたいと言うと、実際に援助もしてくれました。私も開業するとき「2000万円貸してください」と言ったらポンと出してくれて、それを3年で返しました。

 

植草美幸さん
婚活セミナーでアドバイス

── 2009年に結婚相談所マリーミーを設立。表参道の一等地にオフィスを構え、80%という驚異の成婚率で名を馳せています。

 

植草さん:これまで1200組以上のカップルをご成婚に導いてきました。これだけの数になるとやはり必勝法が見えてきます。この人だったらこの人が合うだろう、お見合いして、6回デートして、真剣交際で成婚だな、という流れがすぐに浮かんでくる。それが成婚率の秘けつでしょうか。

 

ただ危機もありました。現在のビルに事務所を構えたのは2020年の2月のこと。業種転換してから10年ちょっと経ったころで、部屋数が足りなくなってきていたんです。家賃は3倍になるけれど、思いきって移転を決めました。でも、引っ越して「よし、行くぞ!」と思ったとたん、コロナ禍が始まっちゃった。夜8時に仕事が終わって外へ出ると、あたりは真っ暗で誰も歩いていない状態です。コロナ禍になって、会員さんたちは先が見えなくなってしまい、何度も緊急事態宣言が出るので、お見合いもできなくなってしまいました。

 

でも、コロナ禍もいつかは明ける。だから、いまできることを一生懸命やろうと考えて。閑古鳥がないている事務所で、1日中何十本と電話をかけ続けました。会員さんたちに、「元気にしてる?」と聞く、安否確認のような電話です。それを半年くらい続けていたら、「気にかけてくれてありがとうございます」と、みなさんどんどん再び活動をする意欲を持ち始めてくれました。またそこから結婚していって、成婚料をいたいただくことができた。どんな危機も、コツコツと一生懸命やっていればなんとかなる。それは身をもって感じました。

 

PROFILE 植草美幸さん

うえくさ・みゆき。1995年、アパレル業界に特化したコンサルティング会社・株式会社エムエスピーを創業。売上高15億円を記録する。2009年に結婚相談業へ事業転換。結婚相談所マリーミーを立ち上げ、婚活現場の最前線で成婚カップルを輩出している。

 

取材・文/小野寺悦子 写真提供/マリーミー