大事にしたくない一心で、中学時代のいじめを誰にも相談できなかったと語るなだぎ武さん。しかし、状況は次第にエスカレートしていきます。(全3回中の2回)

「自分はなんのために学校へ行くのか」

母と小学生時代のなだき武゙さん
母と小学生時代のなだき武さん

── 小学校低学年くらいのころは楽しく学校に通っていたそうですが、高学年になったあたりから苦痛を伴っていったと聞いています。

 

なだぎさん:低学年のときは明るかったんですけどね。高学年になると成長と共に自我が芽生え始めたのか、同級生ともあまりしゃべらなくなっていきました。映画やテレビ、本の世界に没頭していましたが、自分が興味関心のある作品が同級生の感覚とは違ったし、話も合わなかった。クラスの中でもどんどん孤立していきましたね。あと、外に出ずに家でじっと過ごしていたからか、どんどん太っていったんです。小学5、6年生のころには身長130センチで60キロあったので、まぁ肥満です。

 

── 中学校に入るといかがでしたか?

 

なだぎさん:中学からは本格的にキツかったですね。中学に入学して、まだ自分のクラスがわかる前に外で待っていたら、少しヤンチャ風な男子のグループが騒いでるのが聞こえたんです。アイツらと同じクラスになったら嫌だな…と思っていたら、見事に同じクラスになりました。

 

始めは「デブ」とか体型のことを言われはじめて、そこから徐々にエスカレートしていきました。僕は、何をされても特に反応しなかったんですよね。相手に乗っかって言い返したところで余計に言ってくるだけだろうし、相手と同じ土俵に立ちたくなかったというか、無抵抗の美学(笑)。でも相手からしたら、僕が反応しないことで大人ぶっているように見えてしまったのか。さらに攻撃が強くなっていった気がします。今思えば「辞めろや!」って言った方が相手も攻撃をやめたかもしれませんが、そのときは無視することに徹していて。

 

── 学校で助けてくれる人はいましたか?

 

なだぎさん:最初のころはいましたよ。クラスの女子の何人かは「辞めたりーなー」「かわいそう」っていじめてる男子に言ってくれましたけど、そういう言葉を聞くと、どんどん攻撃が激しくなるんですよね、奴ら。僕からしたら「いらんこと言わなくていい。絶対そのフォローいらんやん!」って心の中でめっちゃ思ってましたよ。よかれと思って言ってくれた言葉で、さらにホウキで突かれてるしってね。

 

── いろいろな攻撃があったと聞いています。

 

なだぎさん:クラスで無視される、自分の机が廊下に出される、トイレの便器に顔を突っ込まれたり、上から水を流されたり。教科書に落書きもされました。いちばんつらかったのはお弁当箱を開けたときに、お弁当に砂を入れられていたときですね。母親が毎朝お弁当を作ってくれましたが、砂をかけられた翌朝も、いつも通り台所でお弁当を作っている母の背中を見たときはさすがに涙が出てきました。自分はなんのため学校に行ってるんだろうって思ったし。