妻が亡くなって10年、今思うこと
── お子さんたちは、母親が亡くなってから、たとえばお手伝いが増えるとか、何か変化はありましたか?
ダンカンさん:何もしないですよ(笑)。子どもはそれでいいんですけどね。親に迷惑かけながらのびのびと成長してもらえばいい。あと、うちね、前に猫飼っていたことがあったんです。長男が中学生のころかな。学校の近くで猫を拾ってきて飼うことになったんだけど、半年くらいしたらその猫が背骨折っちゃって、下半身付随になったの。先生も予後が悪いし、トイレの世話もずっとしなくちゃいけないし、これから猫を置いて家族旅行することも難しいだろうって言われて、夫婦でどうしようかって話をしていて。そうしたら子どもたちが泣きじゃくって、旅行なんか行かなくてもいいから一生面倒みる。トイレも全部やるからって言ってそこから10年は生きたかな。その間、子どもたちはいっさい面倒見ないからね。全部俺ら夫婦で世話をしてさ。もしかしたら神経が通るんじゃないかと思って足とか伸ばしてあげたりすると、気持ちいいからって寝ちゃいやがって(笑)。
── 初美さんが亡くなって10年。改めて、今はどんなお気持ちですか。
ダンカンさん:10年間何も変わらない。何を楽しみにしていいかわからないし、これは死ぬまで変わらないと思います。ママリンに対して後悔しかないですね。もっとちゃんとしてあげればよかったね。20歳で結婚して芸人の妻になって、信じられないような努力もあっただろうなって。それを考えてあげれなくて申し訳ない。
── 感謝していることはありますか?
ダンカンさん:すべて感謝しているんだけど、その感謝が返せないっていうね。俺も昔の人間だから好き勝手やらせてもらったけど、最終的には子どもたちが巣立って、70歳くらいになって2人きりの生活になったときに直接、感謝の言葉を言おうって思ってたんだけど、それが言えなくなっちゃったから。ママリンは自分が早く亡くなることで子どもたちのこともすごく気にしていたし、自分も何かあっても誰かに気持ちを吐くこともないですよ。夫婦で言える人はいいなって改めて思います。
── 今後やっていきたいことはありますか?
ダンカンさん:自分が専務を務める事務所(TAP)にもっと若い人を入れて、さらに力を入れていきたいですね。虎太郎も25歳になったし、あとは自分の人生だから自分で切り開いてもらえたらいいなと思っています。
PROFILE ダンカンさん
1959年生まれ。埼玉県出身。俳優、放送作家、脚本家。1983年にたけし軍団入り。現在は株式会社TAP所属、同社専務取締役。
取材・文/松永怜 写真提供/ダンカン