家族まかせにならず、社会で支えられる制度が必要

── ネットでは、「障害のある子にきょうだいを作るなんて」「障害のある人が子どもを産んだら子どもがかわいそう」といった声も見られます。きょうだい児の私自身、とても傷つく言葉だと感じるのですが、藤木さんはどう受け止めていますか。

 

藤木さん:そうですね…基本的にこういう発言は、無責任だと感じています。私も実家を出るとき、「お父さんや弟がかわいそう」と言われましたが、「かわいそう」と言われた側の気持ちはどうなるのだろうと。

 

藤木和子さん
家を出るときに「親や弟がかわいそう」と言われた経験もあるという藤木さん

── そうですね。「きょうだい児はかわいそう」と言われても、喜びや幸せを感じるきょうだい児がいるのも事実で。一概にかわいそうと言わないでと、反論したい気持ちもあります。

 

藤木さん:障害のある子の下にきょうだいを設けることも、障害のある方がお子さんを設けることも、最終的にはご本人が判断することです。問題になりやすいのは、重い障害のある子をもつ親御さんが、きょうだい児の自由を制限してしまうこと。例えば、きょうだい児は小さいころから親に「障害のある兄弟姉妹のために尽くすのがあなたの人生」と押しつけられ、「実家は出ちゃいけない、こういう仕事に就くのが当たり前」と強制されてしまうと、抜け出すのがすごく難しい。だからこそ、生まれてきた子の人生は自由であるということを発信していきたいんです。

 

社会の理解やサポートときょうだいの自由は、相互に関係があると感じています。だから「かわいそう」って言っている時間があるなら、具体的に何かしようよって。私は弟といるときに周囲からジロジロ見られたり、影で悪口を言われたりと、社会の冷たさを見てしまった部分が大きかったので。少しでも社会に温かく受けとめてもらえれば、それだけでありがたいですし。

 

── 多様性が浸透してきましたが、さらに障害者やきょうだい児に対して社会の理解が進むといいですよね。

 

藤木さん:昔はきょうだい児の活動に対して、「障害のある本人が大変なんだから、そんな活動をするな」という反対の声が強かったんです。今はヤングケアラーが注目されたり、発信しやすい世の中になってきて、個人の自由を大切にしようという機運を感じます。私ができることは今後も発信を続けて、みんなで話し合って行動していくことしかありませんが、「自分の行動を誰かに強制されることは絶対にない」ということは、きちんと伝え続けていきたいと思います。

 

PROFILE 藤木和子さん

ふじき・かずこ。弁護士、手話通訳士。1982年生まれ。東京大学卒業。5歳のときに3歳下の弟の聴覚障害がわかり「きょうだい児」となる。現在はきょうだい児の立場の弁護士として発信や相談などの活動を行う。「全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会」副会長、「聞こえないきょうだいをもつSODAソーダの会」代表を務め、「シブコト 障害者のきょうだいのためのサイト」共同運営にかかわる。著書に『きょうだいの進路・結婚・親亡きあと 50の疑問・不安に弁護士できょうだいの私が答えます』(中央法規出版)など。

 

取材・文/小新井知子 写真提供/藤木和子