控えめな性格が変わったバレエ団での生活
── もともと話好きだったのでしょうか。
奈美さん:小さいころはむしろしゃべれない方でした。おばあちゃん子で、近所の人に「こんにちは」と言われても、おばあちゃんの陰に隠れて着物をつかんでいるような感じです。変わったのは、西野バレエ団に入ってから。10代のころは西野バレエ団の寮暮らしで、食事もほかの寮生たちと一緒です。西野バレエ団は先輩・後輩が厳しく、「みそ汁持ってきて」と先輩から言われると、言うことを聞かなければいけません。でもそこで言われた通りにしていると、時間がなくなって食べそびれてしまう。「私もすぐ出なきゃいけないから、スミマセン!」と自己主張をしないといけません。
この業界で鍛えられたというのもあると思います。たとえば、衣裳にしても、赤と黄色と緑があって、私は赤が着たいとハッキリ言わないと、最後に残った違う色になってしまう。最初のころは言えなくて、いつも残った色のものを着ていました。でも、そうすると楽しくないですよね。そんな経験を重ねて、私も自己主張するようになりました。
── 長いキャリアがいまの奈美さんを築いたわけですね。
奈美さん:そうだと思います。でも母には「自己主張が強すぎる、そこまで言うと、かわいくないわよ」と言われましたね。だけど、やっぱり16歳のときにひとりで東京へ行き、芸能界で生きていこうと思ったら、それはしかたなかった。おかげさまで、ダラダラとこの業界で長くやらしていただけました。そう考えると、やっぱりこうなったのは必然だったということなんでしょうね(笑)。
PROFILE 奈美悦子さん
なみ・えつこ。1950年12月27日生まれ、奈良県出身。13歳のとき1500人の中から選出され、西野バレエ団に入団。1967年『文吾捕物絵図』(NHK)で女優デビュー。女優・歌手・タレント・コメンテーターとして数々のドラマや映画、バラエティ番組に出演し、幅広いジャンルで活躍している。
取材・文/小野寺悦子 写真提供/オフィスPSC