70代にして骨が出て緊急手術「当たり前に感謝するように」

── その後、体調はいかがですか?

 

奈美さん:掌蹠膿疱症性骨関節炎に関しては「寛解」という状態です。でも、この歳になると、いろいろ出てきますね。今年になって、大けがをしてしまって。腕を手術しています。

 

── それは大変です!

 

奈美さん:ワンちゃんと散歩をしていたら、向こうから犬がやってきて、急にそこへ走り出してしまって。私はリードを持ったまま引っ張られて、気づいたら転んでいました。まず、頭をガンと打って、なんだか腕が痛いと思ったら、骨が飛び出ているじゃないですか。自分の骨を見たのなんて、生まれて初めてです。

 

そこから緊急手術です。骨を元の角度に戻すため、鉄のプレートを入れて、術後はプレートを固定する鉄の棒が腕から飛び出ている状態でした。お医者さんには「10日経ったらこれを取る手術をします」と言われたけれど、私としては「10日もこのままですか?」という気持ちです。痛くて眠れないし、うたた寝できても5分くらい。顔も洗えなければ、トイレに行っても利き手が使えない。ご飯はスプーンを使って左手で食べるのだけど、慣れていないのでぼろぼろ落とすんです。もう泣きたくなりましたね。

 

大ケガをした奈美悦子さん
転倒し腕を大ケガ

── 経過はいかがですか?

 

奈美さん:退院後は家でリハビリに取り組んでいます。お医者さんいわく、「ふつうは3か月で50〜60%治れば順調なほうで、1年経てば90%治るでしょう」とのことでした。でも私としては、もっと早くしたい。病院でリハビリの方法を覚えて、家で毎日実践していたら、どんどん動くようになってきて。「まだ3か月経ってないのに80%よくなっています、こんな人は初めてです!」と、お医者さんにすごくほめられました。この歳になるとほめられることなんてないから、もううれしくて(笑)。一生懸命リハビリしたかいがありましたね。ケガをしたときはトイレにも行けなかったけれど、いまは両手で顔が洗えるし、料理だってできる。本当にありがたいなって思います。

 

── ポジティティブですね!

 

奈美さん:病気やケガをしたときに学んだのは、「これができない、あれができない」と考えるのはやめようということ。「昔はできたのに」って、言い出したらきりがない。でも、「あれもできた、これもできた」と数えるようにすると、ラッキーだなって思えてくるじゃないですか。でもやっぱり人間だから、喉元過ぎれば痛みを忘れて、できることが当たり前になってしまったりもする。だから何かあったときは、「忘れていたことを思い出させてくれたんだ、よかったな」と思うようにしているんです。

 

PROFILE 奈美悦子さん

なみ・えつこ。1950年12月27日生まれ、奈良県出身。13歳のとき1500人の中から選出され、西野バレエ団に入団。1967年『文吾捕物絵図』(NHK)で女優デビュー。女優・歌手・タレント・コメンテーターとして数々のドラマや映画、バラエティ番組に出演し、幅広いジャンルで活躍している。

 

取材・文/小野寺悦子 写真提供/オフィスPSC